2007/3/13  #1900

吹雪のなかを下山

雪だった。
大雪だった。
福島県の山奥からの車での脱出は
かなりスリリングなものだった。
雪深い地域では、雪が降るとなると
1日で1メートルくらい、ドカッと降るようで
前の日のお昼には雪はまったくなかったのに
昼過ぎから降り始め、1時間で真っ白に、
さらにどんどんつもり、車は埋まりはじめ
除雪車が出動。いくら道路を除雪しても
その上からどんどん降ってくる。
もうだめだ、とあきらめ、次の日にかける。
起きてみると、猛吹雪。窓から外がみえない。
車を探しにいく。あった。しかしドアが開かない。
手で雪をはらってみると、ドアの隙間に
びっしり氷ができていて、接着剤のようになっている。
手で溶かそうと思ってもとけない。
ぬるま湯をかけながら、そっと開けたら
ドアは空いたが、屋根の雪が室内にどっとはいった。

その日は朝から室内で撮影。
この状況が続けば、下山は難しいか。
もう一泊、撮影をしているホテルで泊まるかどうか。
撮影の合間の話題はそればかり。
まじで危ない。アカン。もう1泊しよ。というと、
他の人が、今降った雪が凍ってその上にさらに
雪が降ったほうが、もっと危ない。
今日何がなんでも下ったほうがいい。

ホテルの人も、日が暮れたら、もう1泊されたほうが。
といわれながら、夕暮れを迎えた。
みんなを乗せて走るドライバーはぼく。
責任重大だ。かなりぼくも考えたが
今日下るべきだ、と主張。
日が暮れ始めた6時前に下山開始。
スタッドレスタイヤは、すばらしい。
かなりの雪でもしっかりグリップする。
除雪車が通った跡が凍りやすいから
気を付けて、とホテルの人から言われていた。
その轍らしきコースをさけて
ゆっくりくだる。かなりの急坂が出てきた。
少しすべっているのがわかる。
その度に後ろから、今滑ってるやろ!と
誰かが叫ぶ。
直線だから助かっているが、これで急カーブが
くるといやだなぁ、と思っていたら
思っていたとおりになるものだ。
すぐにカーブが出てきた。
ソーッとソーッとハンドルをきり
ゆっくりまわる。なんとか回れた。
カーブのところには、雪の壁もできつつあった。
これがぼくには安心材料のひとつになった。
最悪は突っ込むだけでおさまるんじゃないか。
崖から落ちたりすることはないだろう。
車がへこむくらいなら。そう思うとスーッと
変な力が抜けた。
すると自信もわいてきて、大丈夫!と
後部座席にすわる7〜8名のやかましい外野たちにも
いえるようになった。
しばらく走るとぐんと雪は減り
アスファルトが見えてきた。
これで確信。峠はこえた。
後ろのやかましい連中も
安心したようで静かになった。
雪はどんどん減り、ついに道路が乾き始めた。
そのころには
寝ている人もいるようだ。よかった。
助かった。

ホテルが見えた。
誰かがついたぞ!と叫ぶ。
一斉に拍手喝采!
ぼくも思わずウォー!と雄叫びをあげた。

ホテルの人がむかえてくれたが
びっくりした様子で、どこに行かれてたんですか?と
との質問。あらためてみると
屋根には大雪、フロントやボディの下には
無数のつらら。あまりにも過酷なその姿は
まわりの風景とはあまりにも違い、違和感があったが
なんとも誇らしい姿にぼくには見えた。

お疲れさん!その言葉が、ホントに心にしみた
雪山下山だった。