2003/12/23  #4

母国語の干渉

「先生、”お疲れ様でした”って英語で何て言うの?」
「うーんその表現英語にはないから 何か大変な仕事が
終わって相手を労いたい時は”thank you for your hard
work”とか”well done"って言うけど 単に通常の仕事が
終わって職場を出る時は"see you"でいいんじゃないかなあ」

と私が言っても生徒はどうもしっくりこないようで どうしても
「お疲れ様」を直訳したいようだ。
こういう英語にはない日本語独特の表現を直訳してくれと
頼んでくる生徒は決して少なくない。

よく聞かれる質問トップ3のうち一番多いのがこの「お疲れ様」
である。
ちなみに次に多い質問が「先輩、後輩」という言葉。
これも縦社会の日本にのみ存在する封建的な言葉で
ぴったり当てはまる英語の言葉はないのだ。
欧米では上司と部下以外はどんなに勤務年数に差があっても
”co-worker(同僚)”なのです。
でやっぱり生徒は例にもれず そこで納得するわけがない。
どうしても「先輩」という言葉を使わないと「先輩」に
申し訳ないといい張るんで私が
「どうしても直訳したければ”my senior"とでも言っておけば?
ただseniorって言うと自分よりもずっと年配で仕事上のランクも
上っていうニュアンスがあるから外国人にはピンとこないだろう
けどね。」
と あえて突き離してみたりする。

文化の違いを知る事なしに語学を習得する事は出来ない!が持論
である。(あっ誰かもそんな事言ってたっけ?スミマセン本の
受け売りです。)

よく聞かれる質問第3位は「久しぶり」という表現。
これは英語でも同じ表現があるので質問に答えるのはさほど
難しくはない。直訳すると”long time no see"
しかし私はこの7年間外国人と働いてきて このフレーズを
使っている人を見たことがないのです。
言語的には何も間違ってはいないんだけど 本当に久しぶりの
人に会った時は”good to see you again"の方が外国人の間では
自然な表現に聞こえるようです。
このフレーズの方が”long time no see"より人と人との距離が
ぐっと縮まりそうな感じがするから
欧米人の気質には合うんでしょうね。

成人になってから外国語を学ぶ場合、母国語の干渉を避けるのは
そう生易しいものではない。
こんなに偉そうな事を言っているこの私も直訳で失敗した経験は
数知れず。。。
いつだったか私がアメリカ人に
赤ちゃんの時お尻に蒙古班があったか
どうか聞きたかったので 蒙古班=mongolian markと直訳して
"Did you have a mongolian mark on your butt?"って聞いたら
そのアメリカ人鳩が豆鉄砲くらったような顔をしていたっけ。。。
ちなみに正しい英語は”birth mark"というらしいが
そのアメリカ人のbirthmarkは 首の後ろに今だかすかに残っていて
どうやらお尻にできる「蒙古班」はアジア人特有のものらしい。
英語を話す時は言葉だけでなく
日本語的発想もオールリセットしないと
自然な表現がなかなか出てこない。

通訳をする時はたまに脳の中で英語と日本語が
入り乱れてわけがわからなくなり
第三の言語が口から飛び出したりする始末である。
だからテレビのニュースで同時通訳をしている人の仕事ぶりは
私にはもう神業としか思えないのである。