2006/5/2  #81

二千年の都、私の10年


10年ぶりに、西安の地を踏んできました。

西安の駅に降り立ち、『我回西安来了(西安、ただいま)』というコトバを口に出す瞬間を、もう何年も前からずっと、心に描いていました。
また来たよ、ではなく、ただいま、と。
つぶやいた瞬間、ちょっと胸が熱くなりました。

この瞬間のためだけに、たった4日間、移動を考えれば実質2日しかない日程で、わざわざ北京からの列車移動をチョイス。
ヒコーキで行きゃいいやん、どうせ業者用の優待価格で取れるんだから、という周囲の声を振り切り、北京空港で出迎えてくれた現地旅行社の人にも首を捻られながら、嬉々として寝台列車に乗り込みました。
かつて、大きなトランクを抱え、期待と不安に満ち満ちて一人で大陸に足を踏み入れた、10年前の自分と同じように。

とにかく、何もかもが懐かしくて恋々として、ほとんど一人芝居の役者か或いはアブナイ人のように、何を見ても嬉しくて笑えるし、愛おしすぎて泣けてくる、怒涛の2日間。
何が泣けるって、
寝台列車の同じコンパートメントに乗り合わせた中国オヤジたちの、「やかましいっ」と叫びたくなるような、西安訛りの大声のおしゃべりにも泣けるし、
駅を降りた瞬間に鼻をくすぐる、「なんか腐らせてない!?」と突っ込まずにはいられない匂いにも、
青々とした影をつくるプラタナスの並木にも、
皮を剥がれて店先にぶらさがる羊にも、
湯気を立てるセイロに盛られた肉まんにも、
この町特有の、白い帽子をかぶった回教徒の姿にも、
めいめいの鳥かごを見せ合い、その美声を競い合わせる老人たちにも、
町をぐるりと取り囲む城壁の威容にも、
思い出が詰まりすぎて、訪ねるのがちょっと怖くもあった、かつて暮らした留学生寮にも。

街なかはもうすっかり大都会の様相で、道行く人たちも身ギレイだしお洒落だし、高級ブランド品のお店もバンバン出来ていて、以前の姿を思い出せないような有様。
当時は、10メートル歩くごとに確実に「日本人?」と声をかけられるほど、服装や髪型に違いがありましたが、今はもう誰も気づいてくれやしない(笑)。

とはいえ、少しはずれにある留学生寮やその周辺は、ほとんど変わることもなく。
勝手に寮の建物に侵入して、舎監さんに無理を言って509号室に入れてもらった時は、さすがに万感胸に迫る思いでした。

いったい何回、「ただいま」ってつぶやいたことだろう。
誰も日本語わからないのをいいことに、肉まん食べながら、ほこりの舞い上がる路地裏を歩きながら、城壁の上から町を見下ろしながら、バスの中でもみくちゃにされながら、ビール飲みながら、ドア無し公衆トイレで鼻つまみながら、何度も何度も、「ただいま」を繰り返しました。
ただいま、ただいま。西安に住んでた頃の自分に、ただいま。

振り返れば今年はなぜか、年始からして、通った小・中・高校を訪ねてみたり、なにか自分の生きてきた足跡を辿るようなことばかりしているような気がします。
先月は、東京に住んでいる大学時代の部活仲間たちから数年ぶりに電話をもらい、とてもとても懐かしくて胸がいっぱいになったりもしました。

いつもいつも、わき目もふらずに前ばかり見て走りまくっているけれど、後ろに残してきたものたちの、何と愛おしく、かけがえのないものであることか。
本当は、自分はこんなにも輝かしい、『歩んできた日々』という名の宝物を、たくさん持っている。
おそらく、それを思い出すべき時期が今、やってきているのだろうと、帰国後ずっと考えています。


・・・・そうそう。話は変わって。

毎回中国へ行くたびに、自分で買い食いするおやつ+接待でいただく高級中華+どんどん勧められるビール、で腹がちぎれんばかりになるのが恒例となりつつありますが、今回もまた、夜中に胃痛で目が覚めてしまうほど、胃腸を酷使してしまいました。
普段はプライベートの旅行といえども、現地提携先の旅行社の方が、問答無用に張り付いて接待してくださるものなのですが、
今回は無理を言って、一人で町をぶらつかせてもらいました。
その分、「せめて夕食だけでも招待させてください」と逆にお願いされ、ほとんど「一食入魂!」とばかりに超豪華な広東料理でご接待。
ああ、自分で小さな食堂で麺とか食べたかったような気もするけど、でもなんて美味しいぃぃっ!!と、もはや絶叫級。

やっぱ、中華料理は世界で一番美味しいと思います。
安いパッケージツアーに参加して、安くて杜撰な中華モドキなんかを食べるなんて愚の骨頂。(それを売ってるのは私が言うな?)
ちょっと奮発すれば、口に入れた瞬間に目が飛び出すような美味しいものが食べられるんだから、中国行ったら食事にお金かけなきゃダメっ!ってものです。
とはいえ、値段だけでツアーを決める世の風潮にはなかなか抗いがたく、どこで予算削るかっていうと、どうしても食事から真っ先に削られてしまうのが、業界の現実なんですけどね・・・。

加えて、西安は小吃(おやつ)天国でした。
住んでた当時は気づいてなかったけど、今回の帰りに立ち寄った北京と比べても、西安のほうが種類が豊富、そして旨い。
昔からのお気に入りだった『柿子餅』などはその最たるもので、柿と餅粉をまぜて作ったお餅に餡などを入れて、少なめの油で揚げたお菓子なのですが、齧った瞬間に「!!!!」となるほど美味しいのです。
保存のきくものも売ってはいますが、揚げたてじゃないとやっぱりダメ。
それから、小麦粉を練って捩じって揚げた「麻花」という小吃。
天津名物と言われていますが、西安交通大学一村(って、住所)の路地で売ってる麻花のほうが、絶対おいしいと思うな、私は。
それ以外にも、まさしく「買い食いおやつ天国」という状態で、2日間完全食べっぱなし、我が食欲に悔いなし!!の旅でもあったのでした。

げっぷ。