2004/9/6  #57


ハノイの中心で『ポリス〜!』と叫ぶ


久しぶりに、ベトナムの首都ハノイへ行ってきました。よく考えたら、これで4回目。
おおっと、愛しのラオスよりも多く訪れてしまったじゃないですか、いかんいかん、ラオスへ行かねば。

仕事で扱う国が15か国もあり、うち5か国ぐらいが未訪問なので、夏休みはそのいずれかに行くつもりにしていたんですが、友人が知人を訪ねにハノイへ行くと言うので、つい「私も行く〜」と日和ってしまいました。
だぁぁって、ベトナムってば、お買い物天国なんだも〜ん、んふ。
案の定、眠っていた物欲に見事に着火してしまい、帰国の際には、買い集めた雑貨や陶器類でカバンはバクハツ寸前。入りきらないものは紙袋でひきずるように持って帰るハメになり、早朝に関空に着いてそのまま出社したのですが、先輩に「なんや、行商人が来たか思った」と言われる有り様でした。

それにしても、3年ぶりに訪れたハノイは、中国の大都市のように跡形もなく街が様変わりしている、というようなことはないものの、おしゃれなレストランやブティックも増え、物価もあがり、初めて行った9年前に比べると、なにか隔世の感があります。
あの頃は、空港ビルもまだ掘っ立て小屋みたいで、日本から払い下げられたバスが日本語の表示も全くそのままに、ガタピシいいながら走っていたものだったけれど。
ああ、アジアに通うというのは、こういうことなんだな、と思う。
すでに完成してしまった(ように、私には見える)ヨーロッパの街などに比べ、アジアの街はいつでもどこでも発展の途上で、何年もかけて何度か通ううち、良くも悪くもどんどん変わっていく様を目撃することになります。変わらずに素朴なままでいてほしいと思うは部外者の無責任な郷愁でしかない、というのはよくわかってはいるのだけど、やっぱり何だか複雑な心境。
と同時に、万物は流転する、というか、この世にあるもので変わらないものなんかないんだということを、だから、目を見開いて、今にしっかり意識を集中させねばならないのだということを、繰り返し繰り返し、アジアに教えられているような気分になります。

今回の旅で、久しぶりにうっかり白タクに乗ってしまいました。
急な雨で慌ててタクシーに乗り込むと、あと少しで目的地のホテルというところまで来て、「プス」という音とともに、人通りの少ないところで停まる車。停まると同時にメーターの数字が跳ね上がったので、「?」と思ってよぉぉく見たら、ありゃりゃ、他のタクシーは数字の後ろに「DONG(ドン=通貨単位)」と書かれているのに、この車は「US$」になってるじゃないですか。あちゃ〜、白タクだ〜。
とりあえず、メーターの数字が「532」になっていたので、53000ドン (3.5ドルくらい=相場よりちょっと高め)を渡してシラきろうとしたら、運ちゃん、「ノーノー、6ダラー!」。って、こらっ、しかも小数点以下切り上げか!
その瞬間、不肖ナゲウリ子、ブチっといっちゃいました。ええ、いっちゃいましたとも。
「ふーざーけーるーなぁぁぁ」と日本語で叫ぶ私、「6ダラー!」と怒鳴る運ちゃん、横で固まる友人。
高級ホテルの前でモメたら、ドアマンが出てきて客の味方をするのが分かってるからでしょう、微妙な場所でエンストのふりして停めるあたりが気にくわないし、見れば、外人にケガさせるほどの根性はなさそう、これは小者。勝てる。
そう踏んだので、さんざん怒鳴り合った後、メモ帳を取り出して、「いいよ、ポリスに行こう、ポリス。アンタの免許証とIDカードみせてよ」と言ってみたけど、相手は無視。なので、一か八か、50000ドン札を置いて車外に出てみました。
この瞬間が、いちばん怖いんですよね。相手が車を急発進させて轢かれるかもしれないし、運ちゃん側のドアから出た私が、一番捕まえられやすかったし。
でも予想どおり、運ちゃんも車外に出てくるには出てきたけど、何かひとこと罵った後また車に乗り込んで、ブィーンと走り去ってしまいました。
・・・・兄ちゃん、エンストのフリはもういいのかい・・・。

この件に関して、私的には、「ちぇ、やっぱ50000ドンじゃなくて相場どおり40000ドンくらいにしとけば良かった」と、その程度の反省材料しかなかったのだけれど、ホテルにたどり着いた後、友人がボソっと漏らした、「やっぱ場数踏んでるだけあって、アンタ逞しいわ」という一言に、友人にはずいぶん怖い思いをさせてしまったんだなと、初めて気付かされました。
そうだよね、ゴメンナサイ。
こういうトラブルにどう対処するか、それは個々人によって考えが違うものね。わずかなお金なら、あえて危険を冒す必要はないと考える人のことも、別に間違ってはないと思う。命あっての物種だもの。
たまたま今回の相手が、私の踏んだとおりの小者だったから問題なかったけど、もしそこの判断を誤ってたら、私だけじゃなくて友人まで危ない目に遭わせてた。ほんとは、友人にも喧嘩する気があるかどうか聞いて、ないなら友人だけ先に車外に出してあげなきゃいけなかったの。理想論だけど。
友人を外に出した後、一対一で私がどこまで戦えたか、ifの話だから分かんないけど、少なくともリスクが伴う場面で、人をむやみに自分の価値観に巻き込んではいけないな、と素直に反省した、ハノイの一日でした。

・・・でもそんなこと考えると、人の上に立つ人、特に一国の指導者の責任というのは、ほんとにほんとに途方も無く重いですよね。なんか、その自覚があるようには見えない指導者もけっこういるように見受けられますけど。
昨日、マイケル・ムーア監督の「華氏911」を見たんです。怖かった。末端では、人がぐちゃぐちゃになって死んでいくのに、その決定を下してる人々が、その重さを露ほどにも感じず(そういうふうに見えた)、マネーゲームやパワーゲームに腐心してるのが。
なんか、普段は政治とか関心ないし、世界情勢も分かってるんだか分かってないんだか分からないような状態なんですけど、こればっかりはもう無知ではいけないなあと、最近。
んあー、また自分に宿題増やしちゃったー。

とりあえず、ハノイ、楽しかったです。
世界遺産のハロン湾で友人と3人、宿泊設備のある小船をチャーターしてお泊まりクルーズしたけど、視察という名目でかなり安くしてもらっちゃった。えへ。あ、もちろん今後は気合い入れて売りますよ、チャータークルーズ。はい。

行く前は、「私ってば、なんで4回もハノイ・・・」と思ったけど、現地でふらりと立ち寄った雑貨店で、ディスプレイに飾られたブックカバーの中身がパウロ・コエーリョの「アルケミスト」で、それはまさに、私がこの旅に持ってきたのと同じ本で。 それを見た瞬間、ふさわしいタイミングで、来るべくしてここに来てるんだな私は、と思いました。だからといって、なにか劇的な出来事があったわけでもないんだけど。
相変わらず仕事が忙しい毎日で、土日挟んでたった3日休むだけでも大変な思いをして、それでも旅に出ることは、私にとって正しく、必要なことなんだと、何かが認めてくれたような気がしたのでした。こじつけかもしれませんが・・・・。