2004/4/5  #48


我が名はナンシー


「では、ご予約のネームをお願いします」
「はい。ナンシーからエイブル、ジョージ、イージー、アンクルからロジャー、アイテム、キング、オーバーのエムエスです」
「復唱します、ナンシーからエイブルジョージイージー、アンクルからロジャーアイテムキングオーバーのエムエスですね?」

・・・さて。別に、呪いの呪文ではありません。
上記は即ち、MS.NAGE URIKO を業界用語にした場合の言い方なのです。
NANCY(ナンシー)はN、ABLE(エイブル)はA、GEORGE(ジョージ)はG、EASY(イージー)はE。で、NAGE。ちなみにエムエスとは、MSのことで、既婚未婚を問わず、女性のことです。

旅行・航空業界では、口頭のアルファベット表現には、必ずこの「エイブルベーカー(ベーカーはBのこと)方式」を用います。
エヌ、エー、ジー・・・でいいようにも思えますが、「エム(M)」「エヌ(N)」とか口頭では聞き間違えやすいし、飛行機のチケットなんて一文字違うだけで無効になってしまうので、結局はこれが一番いいんですよね。使い慣れてしまうと。

この業界は専門学校を経て入ってくる人が多く、こういうのもちゃんと学校で習うそうなので、私が今の会社に入ったときには、「そうか、エイブルベーカーも知らんのか」と、新鮮なオドロキを以て迎えられました。そのくらい、基本中の基本みたいです。

でも、AがなぜABLEなのか、アップルじゃダメなのか、ジョージとは何者だ、Yのヨークって何だ、ヨーダの間違いか、Pのピーターは池畑慎之介となにか関係があるのか・・・・と、実にどうでもいい疑問が、事あるごとに頭をもたげてきます。

エイブルベーカーに限らず、旅行業は、アルファベットだらけです。
各地の空港コードもアルファベット三文字、航空会社はアルファベット二文字。
たとえば、「関空発バンコク行き タイ国際航空627便」は、KIX/BKK TG627 とかみたいにね。
コンピューターでフライトスケジュールを確認するためには、空港や航空会社のコードを暗記しとかないといけないので、けっこ大変です。

先日、ちょっと変わったところへ行きたいというお客さんがいて、そこへ行くのに、どこの航空会社の便があるか調べてたときのこと。
コンピューターの画面に「FE」って出るんですけど、そんなコードの航空会社知らなくて、「えー、FEってどこよー?」ってブツブツ言ってたんです。
そしたら、そばにいた先輩がボソっとひとこと、「・・・鉄ちゃうか」。
あなた、それ元素記号だってばよ。

JALがJL、エアインディアがAI、ルフトハンザがLH・・・とかいうのは覚えやすくて楽なんですが、アルファベット2文字の組み合わせではカバーできる数にも限界があるようで、最近は8Gとか、もうコードからは何も類推できないようなのも増えてきました。数字で始まるのは、たいてい新しい航空会社なんですよね。

・・・8Gか。今は日本線から撤退してしまった、エンジェルエアでした。鳴り物入りで関空に乗り入れてきて、わずか半年で撤退。予約が入ってんのに急に撤退するから、他のフライトへの振替が大変だったんだぞ、8Gめ。
以来、数字で始まるコードのエアラインを見ると、心の警報装置がワンワンと鳴り響いてしまうナゲなのでした。

・・・桜が満開ですね。
せっかくの日曜日ですが、今日は朝から雨です。昨日お花見に行っておいて良かった。
こんな日は、ごはんをゆっくり食べて、新聞読んだり本読んだり、お掃除したり・・・と思うのだけど、昼から会社に行かなくっちゃ。ふう。
転職する前も後も、けっこうハードな職場環境だったので、休日出勤なども当たり前の感覚があったのですが、それはあんまりよろしくないな、と最近しみじみ思います。
仕事が趣味なら、楽しいんだから四六時中やっててもいいだろうけど、仕事以外にも楽しいことがあるんなら、ちゃんとその時間も確保しないと。

営業回ってると、いろんなタイプの人に出会うから気付いたんですけど、ほんとのほんとにデキる人は、過剰に働かなくても利益を上げてるか、もしくは仕事が楽しくてしょうがないから、忙しくてもくたびれてないどころか、めっちゃ輝いてるんですよね。
働きすぎでボロボロって、自信のなさっていうか、無価値感から来てたりするんじゃないかなあ。
人並み以上にガンガンやって成果上げてないと、自分は尊敬されたり愛されたりするに値しない、っていう潜在意識とか?

前職のころ、知り合いの中国人に「日本人はなんでそんなに働く?」と聞かれて、「そこに仕事があるからよ」と、どこかの登山家みたいな答えを返したことがありましたが、ううん、違う。
徹夜とか深夜残業が当たり前の会社の雰囲気にハマリ込んで、徹夜しないと追い付かないような仕事を与えられるままにやってただけで、なんも考えてなかった。
徹夜しないでも済むように仕事をコントロールする自信もなかったし、無理をして責任を果たすことで、ようやく周囲にも自分にも自信が持ててた。
ワーカホリックでしたね。平日のデートとか苦痛だったもん、「仕事たまってんのにー」とか。年頃の女としては、甚だしく方向を誤ってました(笑)。

今ちょっとずつ、自分の中の無価値感と向き合って、「周囲の評価に関わりなく、私は私」と自分に言い聞かせている最中です。認めてもらいたいがゆえに、必要以上に頑張って自分を疲弊させたりしないように、と思う。
・・・怖いですけどね、休むのは。何より、他の人に、「あんまり働いてへんのちゃうか」と言われるのは屈辱的だし、怖い。
でもまあ、土日はできるだけ会社行かないように心がけ始めて数か月、営業成績はかえって飛躍的に上がっているところを見ると、自分を大切にしながら働くほうが、仕事はちゃんと回っていくように思えます。
周囲ではなく、自分で自分を認められるようになれば、それに見合うだけのものが、ちゃんともたらされるのだなあと、最近考えているのでした。

あぁぁー、すいません、また禅問答になっちゃったー。