2003/11/3  #36

愛する西安に思うコト

中国・陜西省の西安で、なんか大変なことが起こっているみたいです。
「西安市内にある西北大学の日本人留学生が、文化祭でわいせつな寸劇を演じ、これに怒った中国人学生が留学生宿舎に乱入。日本人学生に怪我を負わせたため、同大学の留学生40人前後が市内の日系ホテルに避難したが、中国人学生を中心とした1000名以上のデモ隊が、謝罪を求めてこのホテルを取り囲む騒ぎとなった」───と。

あらー・・・・。
私もかつて西安に留学していて、今でも西安については並々ならむ愛着を持っているだけに、なんだかすごく身近で、胸の痛い事件と感じています。
問題の「わいせつな寸劇」がどの程度のものなのか分からないから、なんとも言えないのだけれど、留学生といえば、コトバや専門知識だけでなく、中国の文化や民俗も一緒に学んでいる人達なわけで。そのあたりについての配慮なく、ただ日本人として面白いと感じるものだけを追求してしまったというのは、本当に残念です。
外国人問題に言及するときの石原慎太郎に対するのと同じような、苛立たしさを感じてしまう。

──と思ったけど、問題は彼らの人間としての資質だけに留まらないと思うんですよね。
背景には、日中間に燻る国民感情というものがあるし、留学生の置かれた、ちょっと特殊な環境にも原因があるんじゃないか、と。
というのも、私が留学していた頃から、いや、それよりもっと前からずっと、日本人や韓国人留学生が同じ国の人同士で固まって、ほとんど独立したコミュニティーみたいになって留学生活を送っているのが、けっこう問題になっていたんです。
もっとも、中国政府のほうでも、先進国、特に民主主義国家からやってきた学生によって、民主主義思想が人民の間に急速に広まっていくことを歓迎しなかったため、留学生と中国人学生の接触には何かと制限をつけられていたりして、そのせいもあったと思うのですが。(留学生宿舎にまとめられて、中国人学生の出入りにもチェックが入ってたんです。今はどうか知りませんが。)

西安は比較的、日本人留学生の少ない街でしたが(陜西省の省都のくせに、当時はとんでもない田舎だったから)、北京とか上海なんて、一つの大学に、何百人単位で日本人学生がいましたものね。日本人同士で寄り合っているだけで十分快適に暮らせたし、真剣に語学を学び進むうちに必ずぶつかる、「100%伝えきれない」という歯軋りするようなジレンマにも、直面せずにすんじゃったりして。
1年も2年も留学してるのに、ちょっとした日常会話レベルの中国語さえできない子もたくさんいました。今でも、そういう状況はあるんじゃないかと思います。

もっとも、そんな環境に安穏として日を送るのも、自発的にそこから抜け出して中国社会を学ぶのも、それは本人の選択次第なので、ダラダラ留学生を擁護するつもりはないのですけれど。

この騒動のニュースを聞いた当初、「これだけ日本人もたくさん中国に行って、国際交流も進んでいるように見えるのに、いったん何かコトが起これば、結局はナショナリズムに走っちゃって、日本人憎し、中国人憎し、みたいになっちゃうんだなー。国際理解って何なんだろうなー」と、なんだかやるせない気分になったりしていました。
でもたぶんそれは、顔が見えていないから。
前述のような環境で、留学生たちも中国社会や文化を十分に理解しているとはいえない状態だったに違いないし、ましてや、昔ほどではないにしても情報の統制された中(余談ですが、天安門事件の際、北京郊外に住む中国の人たちの間でも、あの流血事件を全く知らない人が多かったという話があります)で暮らす中国人が、日本人を真に理解しているはずもない。

何が言いたいかというと、もっと顔の見える交流を、ということなんです。
よく国際協力の現場で言われる、「カネだけ出して顔の見えない日本」という言葉に対して、以前は「それでも、何も出さないよりはマシでしょう」と思っていましたが、やっぱり顔は見えたほうがいい、絶対に。
とりあえず、身近なところから、留学生たちにはもっと外へ出てもらいたい、とかつての留学生は思います。留学先で出会う日本人の新しいおトモダチも魅力的だろうけど、そこは中国なんだし、どんどん中国人のお友達も作って、接する中国人に、新しい日本人観というのを植え付けてきてほしい。
そういう意味では、旅行者も同じです。
たまたま出会った日本人旅行者と接することで、ちょっとでも(ほんとに、すっごいチョットずつだろうけど)中国社会における日本人観が変わっていったら、たとえ今回のような事件が起こっても、騒動自体はもっと小さくて済むだろうと思う。
例えば、いきなり話が大きくなるけど、靖国神社参拝の問題だってね、あんなにアジア諸国が神経質に騒ぎ立てるのは、戦時中の記憶があって、日本がまた軍事国家の道を歩むんじゃないかっていう懸念を持っているからでしょ。
でも、また日本がアジアを侵略して軍事大国になればいいなんて本気で考えている日本人なんて、ほとんどいないんじゃないでしょうか。そんなことすら、アジアの人たちには伝わってない。顔が見えないから。イメージでしか、日本人を捉えていないから。

海外に行く人は誰でも、プチ親善大使みたいなものだと思います。現地の人は、出会った私たちを見て、日本人ってこういうもんだと知るのだから。
人でも国でも、敵対して良いことなんか、いっこもないですもんね。批判して戦ってやっつけて、優位に立って初めて自信を持てるような国家や人間でありたくないよ。攻撃する人って、一見強そうに見えるけど、怯えてるから先制パンチ打っちゃうだけでしょ。
よく知り合って仲良くすればするほど、平和で幸せ。単純だけど、そう思います。
ごめんなさいね、頭にお花でも咲いてるような理想論でまとめちゃって。
でもやっぱ、愛が世界を救う、と思うのデシタ。