2003/9/24  #34

アジアへ向かうキッカケ本

「二つの国の物語」。
このタイトルを言って、知っているという人がいれば、私はその人に会いに行って、友達になりたいと思う。
そのくらい、私にとっては特別な本です。
たぶん誰でも、人生のある場面で、生き方を変えるきっかけになったり、考え方に影響を与えるような本や音楽、映画などに出会ったりするものだと思うのだけれど、私の場合、この本がまさにそれでした。

10歳の時、田舎の町にやってくる移動図書館の車の中で見付けたその本は、全3巻からなる、中国の旧満州で育った日本人の少女の物語。作者の実体験をもとにしたその物語は、中国という国の存在を初めて具体的に私に示し、その後数年にわたって、私の中に中国への興味と憧れを熟成させていきました。
そして8年後、外大の中国学科に入学。在学中に中国に留学し、そこでアジアの留学生たちと出会ったことで、アジアや旅を知り、巡り巡って現在にいたる、という、まさに「人生のキッカケ本」になりました。
その本に出会わなければ、中国に興味を持つこともなかったかもしれないし、大学に入る為に神戸に出てくることも、やがて大阪で今の仕事に就くこともなかったかもしれない。
それにこの先、仕事を辞めたり変わったりすることはあると思うけど、中国やアジアとは何らかの形で、一生関わり続けていきたい。

たった一冊(いや、三巻あるけど)の本で、そんなふうに人生の方向性まで決まってしまうということは、その本の持つパワーの大きさを言うこともできるし、人生というのが、出会ったものによって、いかに影響を受けるものであるかということだとも思いました。

本から始まって、そんなふうなことまで考えた背景には、カンボジアの施設で暮らす子供たちのこともありました。
ポルポト時代に教師が多く殺されたことや、経済的な問題もあって、カンボジアの学校教育自体があまり整備されていないということもあるけれど、私が訪ねた施設の子供たちの多くも、識字が十分でなかったから。
字が読めなくても本が読めなくても、人はじゅうぶん幸せになれると思うけど、いろいろ難しい境遇を経てきた彼らだからこそ、本が読めたら、そこから何かのきっかけを見つける可能性も広がるんじゃないかと思いました。そうあって欲しい、と。

ちなみに、私にとっての宝物のようなこの本の作者に、大人になったら絶対に会いに行こう、と小学生のころ心に決めましたが、結局大人になるまえに、亡くなられてしまいました。それを知ったときは悲しかった。

今、星野道夫さんとの交流の記憶を綴った、リン・スクーラー著「ブルーベア」という本を読んでいますが、その中で星野さんの言葉として出てきたものが(星野さん自身の著作にも、その言葉があったように思いますが)、ずっと残っています。
「人生は、僕たちが思うよりずっと短い。だからこそ本当に生きようとするのだ」と。

うん、人生は本当に短いのかもしれない。
大人になったらなんて思わずに、親におねだりしてでも会いにいけば、中学生の時なら間に合ったのにな。
そんなことを思うと、やりたいこと、会いたい人が噴出してきて、もうジッとしてられないような気持ちになります。
そのうち、なんて言ってないで、やりたいことはすぐやって、会いたい人にはすぐ会いに行って、伝えたいことは今すぐに伝えたほうがいいよー。

って、それは、いろんなことを迷い探し続ける自分自身へのコトバ。でもあるのでした。
スイマセン、アジア本について書こうと思ってたのに、人生問答みたいになっちった。