2003/4/14  #23

「カステラで買収?」

京都の亀岡にお花見に行ってきました。お花見という名の飲み会には参加していましたが、本当にお花を愛でに行くのは今春初。なので、桜色の着物を着て、気合い十分で臨みましたけど、うん、静かでのんびりしていて、里の桜も山桜もホントに綺麗でした。亀岡最高。

でも、そろそろ桜の季節も終わりですね・・・・。

と、ウチの仙台支店の人と電話しているときに言ってしまったら、「こっちはまだ咲いてもいませんよ」と突っ込まれました。
そっか、東北の桜はまだまだか。日本って長いなあ、と、仙台支店の人がプレゼントしてくれた「日高見」というお酒(しかも一升瓶)を飲みながら、しみじみしていました。

旨いです、「日高見」。以前に友人が青森から買ってきてくれたお酒もとっても美味しかったし、最近すっかり東北の日本酒ファンです。東北バンザイ、ビバ東北。行くぜ東北、待ってろナマハゲ。花巻っ子のやえちゃん元気〜?

・・・・というようなことを書いていても、私の場合は読んでくれている方が「へえ、そう。」と思って終わりですが、これを国内を主に扱う旅行社の営業マンが言うとどうなるのか、というのが今回のテーマです。

結論から言うと、その営業マンの事務所あるいは自宅に、仙台の旅館かお土産物屋さんから、「日高見」が1ダースほどドーンと送られてきます。

さて、なぜでしょう?

実は先日、コラムを読んでくださっている福井県の方からメールを頂戴しました。
JALのバーゲンチケットを買おうとしたけど申し込みした時点で既に売り切れで、なぜ一般人が身動きの取りにくい平日の昼間に受付を開始するのか、もしかして一般人に売る気などなく、暗に旅行業者にチケットを売って、バックマージンを取ろうとしているのではないか、というご質問でした。

このご質問については、後で書くようなご説明をして、航空会社にそういう意図はないであろう旨をご理解いただけたんですけど、その方がそう思われたのにも、ちゃんと理由はあったんですよね。

ちょっと引用させていただきます。↓
『福井県の三方五湖って知ってます?
観光地なんですけど、そこの観光リフト乗り場のバイトをしてたんです。
観光バスがくるとカウンター持って人数数えて、人数_○○円を封筒に入れて、バスガイドにわたしにいってました。
いわゆるバックマージンというヤツですね。
だから、観光バスは「私のところの客ですよ〜」とわかるようにワッペンやバッジなんかを客につけさせてるんですね。
ちょっとこれとは質が違ったかもしれませんが、航空会社を観光バス、旅行会社を観光リフトと置き換えて考えていたんです。
航空会社が「座席を有利に確保させてやったんだからバックマージンよこせよ」と。』

・・・そうなんですよね。国内って、そうなんです。
アジアなどの海外でも、ショッピング1店につきバックマージン(私達はコミッション、またはキックバック=KBと呼びます)いくら、というのがあるんですが、国内はお土産物屋さんだけでなく、観光施設やホテルからKBが出ることもあるんだそうです。

私の担当の旅行社さんは中・小規模の会社が多くて、そういうところの営業マンというのは国内も海外も両方扱ってる方がほとんどなので、国内のKBに関する話はけっこう聞く機会があります。

けっこうね、スゴイですよ。
大型土産物店とかに観光バスで乗り付けると、メールくださった方が書いておられる通り、添乗員さん(派遣の添乗員さんではなく、正社員の)はお金の入った封筒渡されて、その上もしお客さんがたくさん買い物でもしようものなら、帰り際に店主が出てきて、添乗員さんに握手を求めるんですって。
で、握手して手を放すと、手の平には小さく折りたたんだ1万円札が・・・って。

いやー、怖いわー。アジアではこんなこと無いもの。
・・・・あ、あるか。アジアは、男性添乗員さんがホテルの部屋に帰ると、なぜか裸の女性がベッドに横たわってたそうです、昔は。今はそうでもないみたいですけど。
そっちのほうがエグイですね、あー(泣)。

それで、現地に行ったときにお金を渡されるだけでなく、たとえば、長崎に50人くらいで行く団体ツアーがあるとするでしょ。そしたら出発の1週間くらい前に、そのツアー担当の営業マンのところに、カステラ屋さんからダンボールいっぱいのカステラが送られて来るんだそうです。
「長崎にお越しの際は、ぜひ当店にお立ちよりください」って。
その営業マン、「オレ、長崎にツアー出すなんて、この店のヤツに一言もゆうてへんで。なんで知ってんねやー」って言ってましたけど、予約してる旅館から情報流れるんですかねえ。

競争激化の折、国内のお土産物屋さんや旅館さんも大変みたいですけど、それにしてもダンボール1箱分送って、お金渡して、それでもお客さんが来てカステラ買ってくれたら利益が上がるんですよねえ。・・・・カステラの原価っていくら??

いったい、KBって誰が始めたんでしょう。「ふふふ、越後屋、そなたもワルよのぉ」とかゆってるくらいですから、ずーっと昔からあったんでしょうか(意味が違う?)。

そもそも、旅行業界のお給料が安いのって、このへんにも原因があるのではないかと思います。
もちろん、他業種に比べて人件費がかさむとか、薄利多売とか、いろいろ原因はあるんでしょうけど、お給料の安さをカバーできるくらいのKBの制度があったために、薄給体質が改善されなかったんじゃないか、って。

国内は相変わらずこんな感じだし、海外もね、昔はすごかったらしいです。
20年くらい前までは航空券も高くて、誰でも海外に行けるような環境ではなかったでしょ。
そのころは、海外への航空券1枚売るごとに、航空会社から莫大なKBが、旅行社の営業マンの手元に転がり込んでいたらしいです。
昔を知るベテランさんに言わせると、「ちょっと悪いことすれば、航空会社からのKBで家が建った」って。悪いことしなくても、車くらいは買えたそうです。

うひゃ、信じられない。今なんて、KBどころか「席ください、航空会社様」って感じなのに、私達。
困ったものです。

では最後に、JALのバーゲンフェアの謎、および現在の航空会社と旅行業界のあいだの寒い関係について、福井の方に送ったメールを一部改訂・転用させていただいて、今日は終わりにしたいと思います。

『まず、バーゲンフェアの受け付け開始時刻が平日の朝や昼間に設定されていること。これは単純に、受入れ体制の問題だと思います。
一般客の方に利用していただきやすい土日や夜に受け付けできるなら一番だと思いますが、労働条件、特にJALなどの大会社になると組合の問題もあるので、通常の勤務体制以外の日に、そんな大掛かりな受け付け体制を敷くということはできないと思います。

「安いというイメージを消費者に植え付けるために」こういうフェアをする、というのは本当にそうだと思います。
実際、配席数はとても限られていますし、業界で言うところの「アイキャッチ効果」も狙ったものだと思います。これはスーパーのチラシとかでも同じですよね。

ただ、旅行業者に買い占めさせる、という意図は、航空会社には全く無いと言い切れます。

今の航空業界というのは、どんどん旅行会社を外す方向に進んでいるんです。いわゆる「中抜き」というんでしょうか。
各業界で話題になっている、メーカーと一般消費者の直接取引きの現象のようなものですね。間の商社や問屋を外していくことでコストダウンしていこう、という。
私たち旅行会社は、この商社や問屋に当たる存在です。

少し前まで、航空券のチケットというのは旅行会社のカウンターで買うものだったですよね。
それが今では航空会社のサイトやコンビニなどで、直接購入できるようになってる。

旅行会社の存在を、どんどん消しにかかられているんです。今まで、チケット発券を代行することで得ていた手数料がなくなってしまうのですから、業界は大変です。

だから、こういうバーゲンフェアというのは、完全に一般消費者を対象にしたもので、旅行会社からのキャッシュバックもなければ(というか、そういう制度はもともと無いです)、旅行業者だからといって、フェア価格よりさらに安くしてもらえる、ということも全くないそうです。

親しくしている旅行社のスタッフに言わせると、「馴染みのお客さんに、バーゲンチケット取ってって言われるのはすごく困る」んだそうです。予約が集中するから時間取られるし、取ったからといって航空会社からのコミッションはないし、お客さんからもらえる手数料なんて、ほんとに何百円単位(こういうチケットの取り扱い利益は、販売価格の何%、って決まっているので)。
普通だったら断るとこでしょうけど、馴染みのお客さんに頼まれたらイヤともいえないし、って。

航空会社というのは、悲しいかな、たとえ1人しかお客さんが乗っていなくても、飛ぶと決まっている以上は飛ばさなければならないんですよね(とか言いつつ、このSARS騒ぎで搭乗者が激減して、フライトをキャンセルする航空会社が続出していますが、これは特例でしょう)。

ということは、搭乗率の悪い時期については、たとえ正規運賃の半額以下でも、売らないよりは売っちゃったほうがいいわけです。売れても売れなくても、飛行機は飛んでいって、ガソリン食っちゃうので。』

以上です。寒いお話でした。
ではまた、来週か再来週か、たぶんそのへんに・・・。