2002/10/21  #8



「テロでキャンセル、略してテロキャン」

10月14日の早朝。
祝日にしては珍しく早起きした私は、ボーっと新聞の見出しをながめていました。
「あー、パリでテロかあ。最近ヨーロッパも物騒ねえ。ってことは、ヨーロッパ旅行をキャンセルしたお客さんがアジアに流れてくるから、今年の冬は忙しくなりそうねえ、はー。」
パリじゃなくてバリだと気付くまで、所要約15分。
のんびりと朝食を作り、優雅にリンゴの皮をむきむきしていた私は、テロの映像を映し出すテレビの画面に妙な違和感を覚えました。
「んー?パリにしちゃ、なんかみんな顔濃いなあ。フランス人って、こんなに黒かったっけ。
・・・・って、きゃぁぁぁ、
これバリじゃぁぁぁぁぁぁん!?

・・・アジアのランドオペレーター営業マン・ナゲウリ子、バリ旅行もお取り扱いさせていただいておりました・・・。

海外旅行業に携わる者にとって、最も懸念すべきは今や不況でも低価格競争でもない、まさにテロ、です。

現地で自分とこのお客さんが巻き込まれたりしたら、それこそ大事件だし、そうでなくても、その後は該当地域のツアーキャンセルが相次ぎ、小さな会社であれば会社の存続自体が揺るがされることになりかねません。
実際、昨年の9.11テロのあと、アメリカ専門の旅行社やランドオペレーター会社が何社も解散に追い込まれたのを、私達はこの目で見ることになったのです。

思えば、昨年は大変でした。
アメリカだからアジアは関係ないだろうということは全くなく、鬼のようなキャンセルの嵐。
怖いだろうと思います、飛行機乗ること自体が。
あんな映像見せられたらね。

9月10月のツアーキャンセルはもちろん、年明けの団体ツアーでも、社員旅行なんかは会社命令で国内に振り替えになるところが続出。
大企業(旅行社ではなく)なんかは、社員に海外渡航禁止令を出してましたもんね、しかも、国内でも飛行機に乗るな、出張は新幹線で行けって。それはちょっと神経質すぎると思ったけど。

10月半ばくらいまでは、どこに営業行っても仕事の話なんか全くないし、旅行社の海外担当部署の人たちなんか、「まー、ええ機会やし」とかゆって、いっせいに長期休暇とる始末。
儲かるはずのツアーがキャンセルになると、仕方ないと思いつつ、ツライんですよねえ、営業マンとしちゃ。
死んだ子の年数えるなってよく言うけど、失った粗利を計算して、「ぎゃー、10月分200万!」とかゆってみたりして。先輩なんか、「俺がビン・ラディン殺りに行ったる。出張旅費くれ。」言うてましたもん。
ほんと、暗い時期でした。

あの時にビックリしたのは、アメリカ系航空会社のタタキ売り。
旅行業界の社員限定でしたけど、ロス往復、しかもビジネスクラスに乗って、なんと5万円! ビジネスクラスだよ、ビジネスクラス。これがホントの投げ売りだわ。思わず行こうかと思っちゃった。

そりゃ、航空会社は大変ですよね、フライトスケジュールが決まってる以上、お客さんが1人しか乗ってなくても飛ばさなくちゃいけない。だったら投げ売りでも何でもして、わずかでも稼いどけってことでしょう。

いつもはチョー強気な航空会社の営業マンも、あのときばかりは低姿勢でした。
今じゃ、また元の強気に戻っちゃって、「満席ですっ」とかピシャリとやられてるけど。ちぇ。

・・・そんな訳で、バリでテロだとようやく気付いた私は、祝日だけどそのまま会社直行。
だって、一週間後に出発を控えたバリツアーがあったんだもーん(泣)。
現地の事務所に電話して、治安状況とかをレポートにまとめてもらい、旅行社さんにファックス。
まー予想どおり、翌朝、速攻で旅行社さんからツアーキャンセルの電話入りましたけど、やることだけやっとかないとね、危機管理態勢とか問われちゃうし・・・・ああ、不毛。

でもねえ、今回は昨年と違って、バリ以外のツアーはキャンセルにならないんですよ。
ありがたいことだけど、日本社会のアジアに対する関心の薄さを、見事に象徴してる感じ。
200人近い方が亡くなってるでしょ。日本人も混じってる。これが欧米で起こったことなら、もっと大々的に報じられるし、ツアーキャンセルも相次いでたと思う。慣れちゃったのかもしれないけど、大部分の日本人にとって、近いアジアの事件より、遠いアメリカのほうが、実感としては身近だったんだなあと思います。

・・・ちょっと悲しい気分になった、アジア大好き人間なのでした。