#3

生きているんじゃなくて、生かされている。
そのことに感謝せずにはいられなかった。


□うえやま
旅のなかで一番きつかったことは何ですか?

□達さん
一人だということ、孤独だと感じるときですね。
病気をしても、薬があって時間が経てばなおるけど
精神的な弱さはなかなか克服できませんでした。

南米チリで4000メートルの峠越えをしたんですが、
そのときに高山病にかかって、
動けなくなってしまいました。
意識はもうろうとし、食料はおろか、水もあとわずかしかない。
車も通らない。
孤独を感じ、恐怖に襲われ、そのとき旅のなかではじめて、
ダメかもしれない、と思いました。
結果的には助けられたんですけど。

でも、旅を続けてきてわかったのが、
孤独を作り出しているのは自分自身でしかない
ということです。
大勢の中にいても孤独を味わうこともあるし、
ずっと一人でいても、自分には家族がいて、
友達もいると思えば孤独じゃないですよね。
だから、結局全部「自分」なんです。

イスラエルの友人がこんなことを言ってました。
「もしあなたが孤独だと思ったら、
あなたは孤独になる。
もし、あなたが孤独になることを恐れたら、
あなたは孤独になる」

そのとおりだと思います。

孤独を感じるとこの言葉をかみしめていました。
大切にしてきた言葉のひとつです。

□うえやま
世界一周の旅を通じて感じたこと、教わったことは、
どんなことでしょうか?

□達さん
感謝の気持ちだと思います。

旅を始めたころは「自分がやってるんだ」という
気負いがありました。
でも、自転車で走っていると、
大自然の美しさ、厳しさ、怖さ、時間の流れを
心の底から感じます。
圧倒的な大自然を前にすると、
自分の無力さを感じ、
ありのままを受け入れるしかないと思えます。

無限の宇宙のなかで、
地球が誕生した歴史のなかで、
自分の存在なんて一瞬にしかすぎません。
こういうことが実感できる環境に身をゆだねると
人は謙虚になれる。自分が生きてるんじゃなくて
生かされていると思うようになるし、
生かしてもらっていることに対して
感謝せずにはいられない。

朝起きて「今日も生きていた、ありがたい」
そう思えます。

日本のような環境に暮らしていると
自分はチカラがあるんだと
勘違いしてしまいがちだけど、
それが理解できないと、人にも運にも
助けてもらえなかったかもしれません。

今、目の前にある現実を
当たり前のことととるか、感謝するかで、
この先のことが変わるんだと思います。