第5回 その9


「最低を予想しつつ最高を夢見る」
今の僕はそういうスタンスで
この公演の企画に臨んでいます。

□ラムネ庵
NRBQの四回目の来日となる今回、中島さんがライブを主催しようとした
経緯はどんな感じだったんですか?

□中島さん
二回目の来日公演を手伝ってから、三回目に来日した時は、
僕も忙しくて前回話した人(注:第八回参照)が
一人で東京公演をやったんです。
それで今回四回目の来日公演をやろうと思ったのは、
NRBQが東京公演の時にずっと会場として使っていた
「スターパインズカフェ」っていう吉祥寺のライブハウスが
開店20周年記念のイベントとして
NRBQを呼びたいと言いだしたからなんです。
しかも今回はメンバーに加えて、
ホーンセクション(注:サックスやトロンボーンを吹く人たちのこと)付き
の豪華な編成で呼びたいということで、
来日した時に、他に公演をするところを探してたんです。

なんでかっていうと、単独で呼ぶとお金がすごくかかるんですよ。
例えば、海外のミュージシャンを呼ぶには興行ビザっていうのがいります。
どこどこで何日間誰を雇って
公演をしてもらいますっていうビザなんですけど、
その興行ビザをとるだけでも結構おカネがかかる。
だから単独じゃなくて、もしそれが4公演あったら、
そのお金を主催者同士で4で割れるから
一つの興行としてかかるリスクは減るわけですよ。
それでまず彼女のところに話が行って、
ライブの主催をしないかっていう話が
僕のところにまわってきたんです。

□ラムネ庵
そういうのってすごく大変な決意だと思うんですけど、
迷いとかはなかったですか?

□中島さん
うん、やっぱり話を聞いてからしばらく悩みましたね。
主催するべきか断るべきか。
NRBQぐらいの認知度だと成功するって保証は全然ないでしょ?

□ラムネ庵
残念ながらそうですね。

□中島さん
僕は何年も連続でNRBQを呼んでもお客さんが入らないと思ったけど、
前回京都に来てから、3年経つからそろそろ関西でやっても
大丈夫なんじゃないかと思った。
実際タワーレコードなんかに聞いてみたら、最近NRBQのCDも結構売れてる。
もっとも売れてるっていってもバカ売れしてるわけじゃないですけど、
少しずつ聴く人が増えてきているんです。
それになにより、僕自身がホーンセクションつきのNRBQを
無茶苦茶見てみたかった。
だから一大決心して大阪公演を主催しようと決めたんです。
だけどまだちょっとリスクが大きすぎた。
それで知りあいの名古屋のライブハウスに声をかけて
大阪と名古屋でやることになったんです。

□ラムネ庵
なるほど、決意するまではそういう下調べみたいなことをしたんですね。

□中島さん
でもね、結局みんなライブを見たら「楽しかったー」って言ってくれる
自信はありましたよ。
前回手伝った時もそうだったから。
だからみんな心配してくれるけど、やるとなったら徹底的にやって、
駄目だったらその時だと思って。

□ラムネ庵
ライブを実現するためにはどんな準備がいるんですか?

□中島さん
興行ビザを取るのに書類のやり取りが色々あるんですけど、
そのへんに関してはスターパインズカフェがやってくれているので
僕はまずNRBQの興行の権利をスターパインズカフェから買いました。
それで東京公演が終わった後は全部僕の責任でやることになります。
だからもちろんお金のリスクを背負って
チケットを売らなきゃならないし、
大阪公演をするためのあらゆること、
具体的な会場設定、機材、人員、スケジューリング…
そういうものをやっていかないといけないわけです。

□ラムネ庵
じゃあ仮に今度の公演で赤字が出たら…。

□中島さん
完全に僕のところにきますね。必死になる理由がわかるでしょ?(笑)

□ラムネ庵
ということは計算でこれだけは売らないと
赤字が出るっていうのもわかってるわけですね?

□中島さん
そう。だから色々考えられる手段を使って
最初にロケットスタートするために
前売りチケット買ってくれた人にビデオをつけたりとか、
そういう工夫をしてます。待ってても絶対売れないですからね。
これは友達が作ってくれたタワーレコード用のチラシなんですけど、
タワーレコードの梅田店が10月の後半くらいから
NRBQ来日フェアをやってくれるんです。

□ラムネ庵
それも中島さんの売り込みで実現したんですか?

□中島さん
そうですね。

□ラムネ庵
やっぱりチラシを作ったりするのも
中島さんがお金を出すんですよね。

□中島さん
そういうのは最初にロケットスタートして
集めたお金から出してます。

□ラムネ庵
あー、そういうわけで最初に
たくさんお金を集めとく必要があるんですね。

□中島さん
そう。興行の権利を僕がスターパインズカフェから
買っているわけですから、
それに支払う手付金とかもろもろの広告料とか、
最初は結構お金がかかるんです。

□ラムネ庵
機材はライブハウスのを借りるんですか?

□中島さん
いや、僕らで調達しなければならないものもありますよ。
クラビネットっていう
いつもキーボードのテリー・アダムスが使ってる
バンドのトレードマークみたいな楽器があるんですけど、
それはいちいちアメリカから持ってこられないので、
こちらで調達しないとだめなんです。
でもこれがねー、
そこらへんで簡単に手に入るような楽器じゃないんですよ〜。

□ラムネ庵
楽器屋さんで見たことがないです。
もう生産されてないんじゃないですかね。

□中島さん
でもこれがなかったらNRBQの魅力が半減してしまいますから。

□ラムネ庵
どうするんですか?

□中島さん
いろいろ探してなんとか借りる目星はつけました。

□ラムネ庵
バナナホールを借りる会場費とかも結構高いんでしょうね。

□中島さん
そうですね。それはライブが終わった後収益金から払うことになってます。
手続きとしては、僕がバナナホールを借り切る
という形になっているんですよ。

□ラムネ庵
じゃあ、あんまりお客さんが入らなくても
バナナホールには規定のお金は払わなければいけないんですね。

□中島さん
そう、リスクは大きいですよ。
みんながこういうことをしない理由って言うのは
要するにリスクが大きいからです。
それと労力も必要になる。
でもね、失敗することを恐れてたらなんにもできないですよ。
楽しいことには絶対そういうことが伴うもんなんだと僕は思ってます。
だからね、僕は今「最低を予想しつつ最高を夢見る」というスタンスで
このライブの企画には臨んでます。
最低の事態が起こった時でも何百万も借金するわけじゃないから、
また必死に働いたら返せるわけだし、
その代わり、もし達成したらちゃんと利益もでる予定だから。
それがいいライブだったら最高な気分だろうし。
そのへんはちゃんとビジネスとして割り切ってやってます。


(NRBQの大阪公演は11月26日に大成功のもと終了しました。
インタビューは、大阪公演前の10月のものです。)