第5回 その11


自分が心底素晴らしいと思うものが、
商業的に成功する姿を見てみたい。


□ラムネ庵
NRBQのように日本であまり知られていない
ミュージシャンを海外から呼ぶ場合って
中島さんみたいに好きな人が発起人になって
日本に呼んでくるというのが多いんですか?

□中島さん
そういうのが多いみたいですね。
そこまでしてしまう熱狂的なファンっていうのは
結構いるもんですよ。

□ラムネ庵
この前京都にエリック・ジャスティン・カズ
(注:最近やっと再評価されはじめた70年代から活動する
シンガーソングライター)が来てたっていうのを聞いて
びっくりしました。
こんな有名じゃない人も日本にくるんやって思って。
行きたかったなー。

□中島さん
あれは東京のアサダさんっていう、プロモーターさんの企画です。

□ラムネ庵
へー、それは仕事としてやってるんですか?

□中島さん
そうみたいですね。
そういういい音楽、自分の耳を満足させてくれる音楽を
日本に紹介したいっていう思いでやっている人です。
でも資金的にすごく大変だって言ってましたよ。
自分でも音楽をやってる方なんですけど、
ミュージシャンを一人呼ぶごとに高価な
ギターが1本ずつ消えていくって(笑)

□ラムネ庵
それは、売って…。

□中島さん
うん…、ちょっと失敗したら
大切なギター1本売らなきゃいけないっていう、
そのくらいリスクの大きい仕事ではありますね。
でも、そこまでしてなんでやるかっていったら
美しい光景を、いい音楽をいろんな人に届けたいっていう
ピュアな思いがあるからだと思いますよ。
お金儲けだけじゃ絶対にできないです。

□ラムネ庵
中島さんが今回NRBQの大阪公演を主催しているのも
アサダさんの思いと通じるところがあるんじゃないですか?

□中島さん
そうですね。僕の場合は、
あれだけの才能がある人たちがずっと表舞台に出られず、
それほど評価されてない状態できてるわけですから、
あの人たちをもっと世に紹介したいっていう思いがありますね。
ただ何か星の巡り合わせが悪くて今の状態にいるだけで
もしかしたらもっと有名になっていたかもしれない。
でもね、だからこそ良かったっていうこともあるんです。

□ラムネ庵
うーん、どういうことですか?

□中島さん
結局音楽作るっていうことは、翻訳でも同じですけど、
誰が聴くか、あるいは読むかって考えていくでしょ?
インターネットで流すことを考えて曲を作ってる人もいるし、
目の前のオーディエンスじゃなくて、
もっとワールドワイドな視点で
音楽作ってる人もいますよね。
そういうミュージシャンが悪いっていうわけじゃないですけど、
ファンの勝手な意見としては、
NRBQは目の前のお客さんのことを考えて
音楽作ってきてくれたからこそ
こんなにいい音楽を作り続けてこれたんだろうなと思うんです。
ライブとか見ててもそういう演奏を
してくれているなっていうのがわかるんですよ。
そういう面がすごく僕らを惹きつけるんです。

□ラムネ庵
それが売れてしまっていたら変わってしまってた
かもしれないということですね。

□中島さん
聴かせたいと思う対象が変わってくるだろうし
当然音楽も全然変わってしまってたかもしれないですね。
でもね、現実として今のような状態にあることが、
彼らにとっては良いのか悪いのかっていうのはまた別の問題ですね。

□ラムネ庵
うーん、そうかもしれない。
いろいろ苦労もあったでしょうからね。

□中島さん
僕の正直な気持ちとしては、
技術があってほんとに素晴らしいものを持ってる人が
成功するべきだと思うんです。
成功って何かっていう問題はあるけど、
自分が心底素晴らしいと思うものが、
商業的な意味でビジネスとして成功する姿を見てみたい。

さっきラムネ庵さんは、なんでいい曲がいっぱいあるのに、
NRBQが有名じゃないのかわらないって言ってたでしょ?
僕も同じ気持ちなんです。
じゃあ、なんでだろうって考えた時に思うのは、
単に彼らを知ってる人が少ないから!

□ラムネ庵
それは事実ですよね(笑)

□中島さん
だからこそ、もっとたくさんの人たちにNRBQのよさを伝えるために
ライブを企画したっていうのもあるんです。
日本って特殊な国だなー思うんですけど、若い子からお年寄りまで、
ポップミュージックに対する理解度ってものすごく高いんですね。
彼らみたいな音楽を受け入れる耳をみんな持ってると思います。
だからNRBQっていうバンドはこういう音楽をやってて
こういう人たちなんですよって
プロモーションをしっかりしさえすればもっと人気が出ると思うから、
僕はそれの手助けができたらと思ってライブを企画しています。
それと個人的に音楽の楽しさを教えてくれた彼らに恩返しできたらいい
なっていう気持ちもありますね。

□ラムネ庵
たくさんの人が来てくれて、実際ライブが楽しめたら最高ですね。
ライブ当日が一旦のゴールみたいなとこですよね。

□中島さん
そうですね、できる限りのことをライブの当日まで引き続きやって
売り上げが採算の分岐点を越えてプラスになる。
そして誰も損しないことが決定して、ライブが最高で、
見た人みんなが幸せな気分になってくれて…
そうなったらもう最高!(笑)
決して夢じゃないから、きっとそれはできると思います。
そしてそれはたぶん現実のことになるでしょう。

 

(NRBQの大阪公演は11月26日に大成功のもと終了しました。
インタビューは、大阪公演前の10月のものです。)