第4回 その3

山や森を大切にするなら、
もっと木を切らないといけない。
人間の手を入れてやることが大事なんです。

 

□うえやま
いま、自然破壊が問題になっているじゃないですか。
森林を伐採したり、木々を燃やすことが
温暖化等にも影響するなど、言われてますけど、
その点については、どう思われますか?

□焚火小僧さん
日本の山というのは、昔から、人の手が入っていたんですね。
生えている木々を切り倒し、家を建てたり、
落ち葉や小枝などを集めて薪や燃料にしたり 
これで、山の環境は保たれていたんです。
でも、今は石油文化になったでしょ。
だから人が山に入らなくなった。
今の山は逆に荒れていく一方なんです。

□うえやま
ということは、山の環境は守るためには、
人間の手も必要だということですか?

□焚火小僧さん
そうです。絶対に必要なんです。
手入れをするというのは、そこなんです。
この場所もね、ともすると開発だという人もいますが、
ぼくらがやっているのは、開発じゃない、再生なんです。
荒れ放題の山に手を入れて環境を整えていってるんです。
今は日本の木を切らずに、海外の木ばっかり
やたらと切ってしまって、はげ山にしてしまってるでしょ。
あれは、問題です。 再生じゃなくて破壊ですから。
ただ、日本の場合は、日本の木をもっと切らないといけない。
しかし、人件費や運送費が海外よりも高いから、
林業がどんどん衰退して、人の手が入らない山が
増えてるんです。
日本の木を切らないんじゃなくて、もっと切らないといけない。

□うえやま
以前、樹木を治療している人に話を聞いたんですが、
日本の里山は、竹と杉だらけらしいです。
昔は、裏山にいって、タケノコをとって食べたり、
竹細工を作ったりして、竹を消費していたんですが、
最近は竹を切る習慣がなくなったし、
タケノコは輸入もののほうが
安かったりするから、日本の山で採らなくなった。
竹は、すごい繁殖力があるから、
山が竹に覆われてしまうらしいです。

あと、杉ですね。
これも、植林するならお金になりやすい杉を植えまくったから、
杉花粉の原因にもなっていると言われているし
山が杉と竹だけになってしまっているというのが
現状みたいですね。

□Aさん
そういえば、ぼくの知っている場所でも、
そういう所ありますよ。
杉林のなかで、杉と杉の間に、竹がどんどん生えてきてて、
竹は道路を越えて生え出しているし、
もう荒れ放題になっている。

□焚火小僧さん
昔は、人が山の恵みを利用することで、
上手いことバランスがとれていたんです。
でも、山で木を切ると開発だぁ、って言われるでしょ。
そうやない、っていうのにねぇ。
でも、開発するために、木を切ってるところが多いから、
そういう風に見えてしまうかもしれないけど、
全然違うんです。

□うえやま
一緒にされたら、困るということですよね。(笑)

□Aさん
木を切って、焚き火してなんやと言われてもねぇ。

□焚火小僧さん
ここは、再生→発展を目指しているんです。
開発じゃないです(笑)

□うえやま
ぼくも、そういった話を聞くまでは、木を切ることは、
良くないと思ってましたから。
誤解でしたね。

□焚火小僧さん
ここはね、枯れていく針葉樹を切っていって、
広葉樹だけを残すようにしているんです。

□うえやま
それは、なぜなんですか?

□焚火小僧さん
今の流行じゃないけど、
広葉樹って、癒される感じがするでしょ。
葉っぱや枝がこすれあって、ざわざわとしているし、
鳥もたくさんいる。
生き物がいて、にぎやかな感じがするんです。
でも、針葉樹の森って暗くてシーンと
静まりかえっているでしょ。
確かに、鳥は針葉樹に巣を作るんですが、
あまり鳥の声はしません。
なぜか、あまり気持ちよさを感じないですね。
気味が悪いくらいに静まりかえってますから。

だから、ここは昔の里山みたいに 広葉樹の森にしたいんです。
そうそう、最近、沢から水を引っ張ってきて、
せせらぎと池を作り、ビオト−ブにしているんですよ。
ビオト−ブとは、自然な環境で動植物が生息する場所です。
最近は、トンボの幼虫(ヤゴ)やゲンゴロウなどの水生動物を
見なくなったでしょ。
それが、ここではもうすぐ見られるようになる。
この広葉樹の林のなかに、新たな生き物がまたひとつ、
帰ってきますよ。

□うえやま
楽しみですねぇ。賑やかになるじゃないですか。

□焚火小僧さん
俳優の柳生ひろしさんが森の本を書いているんですが、
柳生さんは、わざわざ人工林(針葉樹を植林した山)の木を
すべて切ってしまって、広葉樹を植林しているんです。
普通の考え方とは、逆です。お金にするんなら、
針葉樹を植えたほうが、お金になりますからね。
でも、居心地の良さでいえば、圧倒的に広葉樹の森ですから。
そういった考え方の人も出てきてるんです。
ウチも、これに習ったところがあるんですけどね(笑)

□うえやま
そうやって人が森の中に少しずつ
入っていくようになるといいですね。

□焚火小僧さん
ただ、気持ちがいいからといって、
あまり人がたくさん入ってくると
またバランスが崩れるんですよ。
それを表しているのが、毛虫です。
人がたくさん集まってくると、鳥がだんだん来なくなるんです。
そうすると、毛虫がどんどん増えてくる。

□うえやま
毛虫を食べる鳥がいなくなることで、
大発生になるんですか。

□焚火小僧さん
そうです。この喫茶店を建てた次の年、
このまわりある木のなかで、何本かが、
2回ボウズになってしまいました。
毛虫に葉っぱを全部食べられてしまったんです。
もう、音がしましたもん。葉っぱを食べてる音がね。
「ガリガリガリ・・・」っていうんです。
それで、木の下には、毛虫が食べた葉っぱのかすが
落ちてるんです。
もう、参りましたよ。ホントに。

□うえやま
でも、今は見た限り大丈夫ですよね。

□焚火小僧さん
その次の年には、鳥もこの環境になれてくれたのか、
ぼくらの手入れがよかったのか、なんとか帰ってきてくれて
助かったんです。もう、ホントに嬉しかったですよ。
ほっとしました。
人と自然のバランスも大切なんです。

□うえやま
すごく微妙なバランスで成り立っているんですね。

□焚火小僧さん
以前、ある観光地で、大きなイベントをやって、
ものすごく多くの人が一気に集まったときがあったんですよ。
そのあと鳥がぜんぜんいなくなってしまって、
虫が大発生して大変だったということもあるんです。
自然のバランスは微妙だから、ちょっと間違うと
ガタッと崩れてしまうんですね。
だから、鳥と虫と人間のバランス。大切ですねぇ。(笑)

コナラの木ってあるでしょ。どんぐりの木です。
この木は、炭焼きによく使われるんですが、
成長サイクルがだいたい25年周期なんですね。
切ってから25年たつと、またりっぱな木になるんです。
この周期をうまくつかんで毎年伐採すれば、
木が減ることがなく、上手い具合に循環するんですね。
炭焼きしている人たちは、バランスをとりながら
やってるみたいですよ。

□うえやま
調和なんですね。