ずうずうしくも、ランディさんに原稿をお願いしてしまった私は、うえやまさんに相談し、さっそく特別寄稿のコーナーを設けてもらうことになりました。それに付随して、「樹の治療ってどんなことしてきたんか」簡単に書いてよ、ということで、田口家の皆さんの梅ノ木について、ちょっとだけ、お話したいと思います。その前にお時間のある方は、かなり長いですがウケウリ学にアップした一般的な所見を読んでいただくと、尚わかりやすいと思います。


田口邸の梅ノ木について

梅ノ木の枝全体に枯れ枝が多くでていて、残しておいてもあまり良くない内側を向いている枝や交差している枝も多くあり、腐っている幹本体が支えられる強度を越えて樹冠が発達しているような状況でした。幹はその4割から5割が腐ってボロボロの状態で、幅約20センチ、長さ2メートルを超えて根元部まで広がる大きな縦傷となっていました。

根元周囲の環境については、梅ノ木を取り巻く石組みや、竹などの周辺の植物が、同じ根のエリアの中にあって、根づまりの状態や絞め殺し(他の根同士が絡み合い通導組織を圧迫すること)を引き起こしている状況で、このまま放置すると樹勢が衰えてくる可能性が高い環境にありました。梅ノ木がたくさん花をつけるのは、生殖成長が旺盛なためもありますが、飛び出している枝を剪定していると短枝が増えることにもよります。梅の花は短枝につきますので。花を咲かせるにはエネルギーがいりますから、毎年咲く花やその後結実する梅の実へ送る肥料分が徐々に欠乏してくるのはもちろんのことで、それを吸収できる土の環境、そして元気な根が必要になります。

そこで、すべての枯れ枝は剪定し、内向枝、立ち枝や交差枝などは分枝の元部より切って、全体的に強い風のストレスを受けても幹の強度に見合うよう、コンパクトに剪定を行いました。さらに支柱を施すことによって幹折れ、枝倒れ、倒木などの予防措置を施しました。また、傷口周辺の枝は極力残し、傷口の癒合を早めるよう配慮しておきました。全ての切り口には木質保護材を塗布しておきました。

主幹部の大きな縦傷については、腐っているところを全部取り除き、薬剤消毒をおこなって、乾燥したあと後、特殊な木質保護材を塗布しておきました。

根元周囲の土壌環境については、まず、石組みをすべて取り外し、周辺の植物は撤去または移植を行いました。すっきりした梅ノ木の周りの土を深さ15センチくらい土の改良と肥料を施して、その上に腐葉土をしいて仕上げました。また、梅ノ木から少し離れたところに大きく4箇所つぼ状に穴を掘り、土の改良と肥料を施しました。

土の改良と肥料に使ったものは、木炭チップや粉状の木炭、
培養されたバクテリアとそこから生み出される代謝物を成分にした肥料、完熟した有機肥料、土の中の微生物のためのえさ、すぐ効く化成肥料と2年間じっくり効いてくる化成肥料、微量要素がたくさん入っている肥料などなど、をブレンドして、10〜15%の割合で土と混ぜ合わせて、おこないました。梅ノ木の周りばかり肥料分が高くなってしまうと、周囲の木の根も集まってきますので、お庭の周辺全体に1年半から2年ほど持続して効く打ち込み式の肥料を施しました。だいたいこんなところでしょうか。

あとは、カルテを作って今回おこなった治療の報告をすべて数字化して(すみません、カルテはもっと専門用語だらけで書いています)、今後どのお医者さんが見ても以前何をしたかがわかる状態にまとめ、これからの管理注意事項を書き、治療工程写真といっしょに施主さんにお渡ししました。

だいぶはしょって書きましたが、こんな感じで梅ノ木の治療をさせていただきました。あぁ、田口家の皆さん2日間お世話になり、ありがとうございました。
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