第2回 その6

 

最初に治療に連れて行ってもらったのは、
奈良の大野寺のしだれ桜でした。

□うえやま
盛田さんが、この仕事に就いて、最初に治療に同行したのは
どんな木だったんですか?

□盛田さん
奈良の室生寺の近くに大野寺という寺があるんです。
そこのキレイなしだれ桜でした。
中が空洞になってしまってて、腐ってきてたんですね。

□うえやま
なぜ腐ってきたんですか?

□盛田さん
枝が折れたりして、傷ついたところから、
どんどん腐っていくんですね。
桜は特に腐りやすい。
腐朽菌っていうんですけど、それが幹の中まで
腐らしていくんです。

□うえやま
治療としては、どんな治療をしたんですか?
セメントで固めてしまうとか、聞いたことがあるんですが。

□盛田さん
腐って空洞になった部分にセメントを
埋め込んでいけば、強度が保てるんじゃないか
という方法は、昔イギリスの学者さんが
いってたみたいなんですが・・・。

セメントは強アルカリ性なんですよ。
それ自体が木にとって良いことじゃないし、
木が呼吸もできなくなるんです。
だから、使う場合は、
できるだけ最小限に抑えたほうがいい。

で、治療の仕方ですが、簡単にいうと、
まず、枝や幹の腐っている部分を取り除いて
殺菌剤を塗ってあげます。
そして再び、腐朽菌が繁殖しにくいように、
木質保護剤を塗ってあげるんです。

あと、木が大きく割れている箇所や穴の空いている箇所は、
空洞部分をすべて埋めてしまうんじゃなく、
簡単にいえばセメントを使ってフタをするんです。
そのとき、フタは木の表面から少し内側部分に
鉄筋を組んで厚さ3〜4cmくらいで作るんですね。
あくまでも表面より内側。
なかの空洞部分やセメントが接触する部分には
木質保護剤を塗っておく。

木の生きてる部分って、
小学校の理科で習ったかもしれませんが、
形成層といって、木の外側部分だけなんですよ。

□うえやま
そうなんですか

□盛田さん
以外とね、知られてないですけどね。
それで、セメントでフタをするのは、
あくまでも形成層よりも内側にするんです。
すると、穴の両端の形成層が、
毎年だんだん盛り上がってきて、
セメントで埋めた部分を
覆うように隠していくんです。
わかりますか?
言葉で説明するのは難しいですけど。

□うえやま
人間でも手術をしたときに、
傷口の肉が盛り上がってきますが
そんな感じですか?

□盛田さん
そんな感じだと思います。
時間は、人間よりもずっとかかりますけど。