第2回 その5

 

やっぱり場数を踏まないと
適切な治療は難しいです。
僕は、まだまだですけど・・・。

□うえやま
樹医の歴史は山野先生から始まったといいますが、
治療法なども先生が確立されたんでしょうか?

□盛田さん
そうです。山野先生は山野式外科治療を開発して、
山本満先生がさらにそれを改良し発展させ、
今のウチの親方がそれを引き継いでいます。
そして、日本樹木保護協会では、
それらの特許を持っていたんですよ。

□うえやま
そうなんですか?

□盛田さん
だから、以前は外科閉塞治療が他の人は
どういった処置かわからなかった。
でも、今はもうその特許も消滅しているので
極端な話、素人の人でも
見様見まねで、できます。

ただ、最後まで、しっかり面倒見られる
技術と責任のある人たちだったら
どんどんやってもらったらいいですけど・・・。
ただ、中には、途中で投げ出してしまう
ケースもある。
何回かウチに連絡があったみたいですから。

□うえやま
最初に受け持った樹医さんもしくは樹木医さんは、
なぜ途中で投げ出したんでしょうか?
どこが悪かったんでしょうか

□盛田さん
誤診しているケースが多いみたいです。
腐っている部分ばかりを見て、
そこだけを治療してしまう。
悪い部分は、実は別のところなのに、
そこには気づかない。
たしかに、外見を治療するのは見た目が派手だから
直した気分になるんでしょうけど、
本当は、樹が衰弱してきた根本の原因に目を向けて、
その部分を治療しないといけないのに、
それができていない。

あと、元気がない木を見て、
時期を考えず、安易に肥料を与えてしまった
初歩的なミスや、
根っこの上に土を盛りすぎた場合
(深植えというそうです)とか、
土壌の排水性が悪いまま、
放置してある場合など、いろいろありますね。

木の根っこも、呼吸しているんですよ。
だから、根の上に高く土を持ったり、
水はけが悪くなると
苦しくなって、それに共生しているバクテリアなんかも
死んでしまって、衰弱してくるんです。

□うえやま
じゃあ、盛田さんたちが診断するときは
どんなふうにしてするんですか?

□盛田さん
えー・・・っとですねぇ、
まずは木の状態を細かく診ます。
葉っぱの量や色・艶、
それと毎年伸びる枝の長さや
芽や実の数・充実度なんかです。
次に、周囲の環境です。
周りの木の様子や土壌の状態、
周囲の草木の種類なんかも貴重な情報源ですね。
それと、重要なのが、依頼主さんなどから聞く
その木の歴史です。
今思い出せるのは、こんなところです。

親方の言葉をお借りすると
「対象とする木の育ってきた環境をすべて観察する。
そして今を見極め、将来への処置を考える」
ということです。

□うえやま
それは、やっぱり経験なんでしょうね。

□盛田さん
木にもいろんな性格がありますから、
その木の特徴をじっくり見てあげないとね。
ウチの協会が今まで全国で治療してきた樹木は
1,600本をくだらないそうです。
そして、樹木の診断から足場の設置、治療、管理のすべてを
樹医と技師スタッフでやってしまう民間組織は
ウチだけなんです。

□うえやま
やっぱり、それは山野先生が
大きく影響しているんでしょうか?

□盛田さん
確かに、そういう面は絶対にあると思います。
ただ、過去の治療報告書(カルテ)を読んでみると、
1,600本の治療ノウハウをここまで洗練したカタチにしたのは、
むしろ今の親方だなと思います。

□うえやま
山野先生が確立された外科治療に
山本先生(親方)が磨きをかけて
いまのような治療技術ができあがっている
ということですね。
でも、いくら治療技術が確立されても
どこが悪いのか原因を見抜き、
適切な判断ができるかどうかは
また別の話ですよね。
そこは、やっぱり経験なんでしょうか?

□盛田さん
経験、場数でしょうね。
多くの木を見て、触れて、感じて
はじめて学べることだと思います。
ウチの協会で開く樹医セミナーで
ぼくも、講師スタッフになったりしますが、
熟練の植木屋さんのほうが
よく知っていて、教えて頂いたりする
こともあるんです。(笑)
そういう、在野にいて、
コツコツ木の勉強をしている人を見ると、
憧れますし、しみじみ、僕もまだまだだなぁと
思いますね。(笑)

□うえやま
経験が生きる世界か、いいなぁ。