第2回 その1

 

人々が大切にしている木を
治療して、バランスを整えるのが
樹医の仕事なんです。

□うえやま
樹医って、知らない人が多いと思うのですが、
どういうことを
されているんですか?

□盛田さん
樹医っていうと、獣医ですか?って
必ず言われますから。

まぁ、文字どおり樹のお医者さんなんですけどね。
もう少しいうと、樹医というのは
弱ってきた木々が元気になっていきやすい環境を
作ってあげる職業です。
「樹のバランスを整えてあげる人」と
でも言えばいいでしょうか。
最終的に治していくのは、彼ら自身ですからね。

□うえやま
それには、どんな治療をするのですか?
簡単にいうと。

□盛田さん
そうですねぇ、いろんなケースがあって、
ひと言でいうのはムズカシイですが・・・
枝や幹を切ったり削ったりする外科的なものもあれば、
外から見えない所を治療する内科的なものあります。
あと、根っこのまわりの環境を整える
土木作業があったりと、さまざまです。

□うえやま
自然にまかせて、朽ちていくのを
放っておくのでなく、
それに治療をしてあげるんですね。

□盛田さん
えぇ、それを望む人がいればですけど。
旅行先で、外国のヒトと話していて、
ぼくが樹木の治療をやっているっていうと
それはナンセンスなんじゃないの!?
っていうヒトもいるんです。
確かに、自然の循環のなかでは、
朽ちていく木を助けることは、
決してその摂理にかなったことじゃないことは
僕らもわかってるんですけどね。

□うえやま
自然の森って、
木が朽ちて倒れることによって
今まで光の入らなかったところに光が入り、
そこから、新しい芽が出てくるとか
よく聞きますからね。

□盛田さん
そうなんです。
枯れる木がないと、
新しい木が出てこれなくなっちゃう。
そうやって、森は循環しているんですね。

で、ぼくらがやっているのは、
そんな自然の木じゃなくて、
ヒトが傷つけてしまった木であるとか、
御神木と呼ばれるような木なんかを治療してるんです。
たとえば、道路を舗装するときに、
木の根っこを傷つけてしまったりとか、ですね。

あと、外国ではあまり聞かないんですけど
日本では、木に対して特別な気持ちを
持っているヒトがいるんですね。
先祖代々の木とか、この土地の主の木とか、
言われてますけど・・・。
そのような木が枯れていく様子を
まるで、身内が病気で弱っていく姿と
同じように見ている人たちもいるんです。

自然の摂理だから、
このまま枯らしたほうがいいと思うか、
少しでも命を延ばすために、
治療をしてあげようと思うかですよね。
これは、意見が分かれるところですが。

僕自身の経験から言わせてもらうと、
自然の摂理で枯れていく木よりも、
人々の生活の犠牲となり、
人災ともいえるようなことで、
枯れていく木がほとんどだと思うんです。
今、日本の松が枯れていってるって
ご存じですか?

□うえやま
枯れてる松が多いとは思っていましたが・・・。
それは、なぜなんですか?

□盛田さん
マツノザイセンチュウっていう
小さな虫が原因です。
その虫が木のなかに入ってしまうと、
ほとんどの松は枯れてしまいます。

その虫は外国から輸入してくる松材に
くっついて入ってきたものなんですよ。
元々日本にいなかった虫なので、
日本の松の木に抵抗力がないんです。
だから、どんどんやられていく・・・。

例えば、何かの記念で植えた松の木の葉っぱが
みるみる茶色になって、
枯れてしまいそうなとき、
ヒトはどう思うでしょうか。
助けたいと思いませんか?

この仕事にたずさわって、たった5、6年ですけど、
木に関わってきて、
木にも魂があるって感じるんです。
そういうのを感じてしまうと、
助けたいと思いますね。
元気になる姿を見たいと思います。