2006/6/28  #7

野風組曲   第7章

ガボォット1


第2部。中村市で宿をとる。酒も買って、Fさんちへ送る。ここからが最低だ。ズッコケたのだ。まったく、知らぬ道を走るときはよくよく気をつけねばならぬ。

とりあえず、再現フィルムスタート。足摺岬まで行った帰りの出来事である。峠道を飛ばして帰る。そこへ突然の急カーブ出現。あせる!冷静にエンジンブレーキ、バイクを倒しこむ。すでに反対車線にまで膨らんでいるところへ、山手の崖から流れ落ちる湧き水出現。路面はウェット。やばい!急きょバイクの倒しこみをやめ、上体を起こしフルブレーキへ。そこへ、突然の崖崩れ出現。路面は小石と砂だらけ。だめだ!転んでとめるか!?一瞬の迷いが判断を遅らせる。ブレーキ姿勢をキープのまま場外へ。死ぬかも!頭の中をこれまで様々な思い出が、走馬灯のように蘇る。あぁ、あの時もう少し、あの娘とあんなことも、こんなこともしておけばよかった・・・。道路わきの窪地へズボッとはまる。・・・止まった。1メートル先は崖の落ち込みになっていて、そのはるか下は荒波打ち寄せる海だ。しばらく動けず、そのうちに体が震えだしてきた。どうしようもなく打ちひしがれているところに、通りがかった車のおじさんが助けてくれた。涙が出そうになる。深々とお辞儀をして、大丈夫ですを連発した。おじさんが行った後、バイクを確かめてみる。はたしてほんとに大丈夫なのか?アンダーカバーはバリバリに割れている。ハンドル、クラッチレバーはひん曲がってしまった。本人は?本人は大丈夫らしい。が、こういうのは後からじわじわ来るのである。手首を少しひねったらしい。一転して気分は最悪。エンジンは・・・しばらくセルが回った後、ぶるンと唸りをあげた。またしても涙が出そうになる。

その転んだ後、だいぶ動揺していたのか、せっかく20分もかけて戻った道を、勘違いしてもう一度足摺岬へ行ってしまったのだ。なんというバカ者なのか。40分もボロボロになって走って、しかも同じ料金所に2回もお金を払ったのに、気が付かない奴もいるものだ。

一息ついて冷静にならなければ。すでに営業を開始している会社に電話をする。じつはこれから3日は連休に有給休暇をつけてお休みを頂いているのだ。事務の女の子が電話を取り雑談を交わし、課長に代わってもらう。ガハハといういつもの笑い声を聞いて、なんとなく落ち着いた。感謝。

余談ではあるが、ワタクシはここで提言したい。仕事ばかりに追われている我々企業戦士は有給休暇を積極的に取り、足摺岬に行って転んだり、勘違いしたりして、有意義に過ごすべきだと思うのである。そこで一句。

足摺の 仏の顔見る 岬かな

この川柳はかなりハイレベルなので、今回は特別に、勉強不足の読者の皆さんのために、訳をお聞かせしよう。

これは、春夏秋冬が過ぎ行く一年も、太陽が東から上って西へ沈む一日も、その移り変わりに心を傾けていなければ、一年も一日も大差はない。何気ない日常生活の中にも心を傾けてみると、実はいたるところに慈愛の心が充たされていて、我々はそのごく当たり前の日常生活と、有給休暇届に快くハンコを押してくれる上司に感謝しなければならない。

ご存知の方はいないと思うが、ワタクシは自由川柳友の会、会長なのだ。友の会会報や、総務全般を一人でやりくりしている。毎年、何の問題もなく全会一致でワタクシが会長に就任している。少しは尊敬して欲しい。最初から伸び悩んでいる会員も随時募集している。

宿について、飯を食べて、彼女に電話をする。しかし、大体において、俺様が寂しくて、恋しくて必要とするとき、彼女は電話に出ない。やれやれだ。明日はもっと走らなければ。そーしないと帰れん。

5月2日、本日の出来高。走行距離、高知から足摺岬を経由して、中村市まで310km。2回給油。思えばとーくへ来たもんだ。