2006/6/7  #4

野風組曲   第4章

サラバンド


血の匂いだ。馬鹿マネをしてる場合じゃない。気がつくと涙に鼻血、それによだれまで出して走っている。ちくしょう、さっきのNSR、2サイクルエンジンってだけでこんなに違うもんなのか。スピード違反で捕まらないかなと、勝手なことを考えながら走っていると、佐用インターが見えてきた。そうだここを降りて山越えをせねばならんのだ。その先に目指す砂漠はある。鳥取を目指して走っていると、一緒に鳥取砂丘の看板まで見えてきた。知らなかった、鳥取砂丘とは鳥取市のすぐ横にあるのか。鼻血をすすりながら走っているうちに、もう着いてしまった。

観光案内の命ずるままに、あれよあれよと砂丘にたどり着く。これが砂漠か!?俺様の求めていた砂漠?うーむ、何かが違うような気を引きずりながらブーツを脱ぎ、裸足になる。考えながら丘に向かって歩き始めると、その砂丘の大きさに圧倒され始める。おお、なかなかデカイではないか。足の裏に感じる砂の感触が心地よい。そうか、ここは砂丘だ。砂漠ではなく砂丘なのだ。あいや失礼、これは俺様、大間違いの勘五郎になるところであった。

砂丘を登りつめ、景色を眺める。いやいやいや、すばらしい景色だ。おもしろい、青々とした海から砂浜になり広大な砂丘が広がっている。砂と海しかない世界。ふーむ、しかし砂浜ができると言うことは、近くに川があるはずなのだが・・そんなことを考えていると、同じ一人旅のライダーが声をかけてきた。ライダーNさんだ。

早速、意気投合した二人は、いろいろと語り合う。まず、何処から着てどこへ行くのか。何の仕事をして、アレがナニした、コレがナニしたと、俺様のほうは一通り話し終えて気が収まったが、Nさんはまだ気が収まらないらしい。この男、とてもよくしゃべるのだ。

ここ、鳥取砂丘に来たのには訳がある。以前から、広大な砂漠の中、一人ぼっちで空虚な気分に浸り、悟りを開きたかったのである。ところがこの男、スピッツのごとくしゃべり続ける。男のおしゃべりは好きくない。まぁしかし、コレも何かの縁、悟りを開くのは今度にしとこう。
「とりあえず、ラクダと写真撮ろっか?」と、Nさん。んで、ラクダ屋に行ってみると、店主のオヤジが、「今日はもう終わったよ!」だと。「え?まだ3時だよ」。「3時でおしまい、閉店」。なにィまったく!もっとまじめに仕事せい。

途方にくれた二人が辺りを見回すと、ラクダが膝を折って横になっている置き看板(下のほうに鳥取砂丘観光記念と書いてある)を見つけた。ははぁ、記念写真用だな。Nさんと示し合わせて、そのラクダの絵看板にまたがった。ヘルメットをかぶり、ラクダに二人乗り状態。そこを歩いている人に写真を撮ってもらった。周りの観光客が、それを見て笑っているので気分は良かった。さっきのオヤジが、「ひとんちの商売道具使って遊ばないでくれる!?」と怒鳴っていたが、そんなのは知らん。午後3時かそこらでラクダをどっかへやっちゃう方が悪いんじゃ。それから、二人は連絡先を確認しあって、それぞれの目的地へ向かう。

一体、何をしに砂漠へ来たのだと、自分でも首をかしげてしまうくらい、あっけなく目的は達成されてしまったので、とりあえず53号をひたすら岡山方面へ向かう。Fさんから、武蔵の里の酒がウマイということを聞いていたので、そこの酒蔵まで買いに行く。ちょっと利き酒してみると、辛口でなかなか旨い。それがマズかったのか!?気分も良く走っていると、前方にずいぶんのん気な軽トラックが走っている。そしてその後ろに2台、車がつながっている。俺様のハートの点火プラグに火がついた。本当の走りと言うヤツを、見せてやらねばならん。タイミングよく、とっとと追い抜いてしばらく走っていると、後ろからプップーと鳴らしてくるヤツがいる。「なんだ!この俺様の走りを邪魔するヤツはなんぴとたりとも許しはしない。」ところが、バックミラーを見たとたん、戦慄が走った!まさか!この俺様が?ほかのヤツじゃないのか?ぐるりと見回すが、やはり誰もいない。
なんとワタクシは生まれて初めて白バイに取っ捕まってしまったのである。パクられた!くそお、捕まえるならNSRにしてくれりゃぁいいのに・・だいたい、どうして君達警察は県境にいるんだ!しばらく、白バイのあんちゃんと世間話をして(ゴマなどすったりしてみたが)、やはり切符を切られた。ワタクシは自主的に国家に対して、源泉徴収される税金とは別に、金7千円を寄贈する。どうぞ、有効にご活用ください。ここで一句。

あなわびし  2点も取ったな  この野郎

その後は、ビクビク後ろを見ながら、騙し騙し飛ばしてきた。しかし疲れた、腰が痛い。あっちこっち探しても、泊まれるとこがねぇーんだもんナァ。今日は安ビジネスホテルに泊まる。風情は無いが仕方がない、疲れたので寝る。ふぅ、長い一日であった、明日は瀬戸大橋を渉ってみよう。砂漠はいい・・ムニャムニャ・・。
4月30日。本日の出来高、橿原から鳥取砂丘経由、岡山まで。
走行距離470km。本日2回給油。