2003/6/23  #6

ユニフォームストレスの原理

さまざまな視点から植物を捉えることができるが、今回は樹木がいったいどんな力学的な構造で成り立っているのかに焦点を当ててみたい。

人間などの脊椎動物には心臓や肝臓、腎臓、肺・・・数えだしたらキリがないほどの器官があり、しかも定められた場所に収められてる。しかし植物の場合、基本的に葉っぱと茎と根っこの三つの器官しかない。意外に思う方もいるかもしれないが花は葉が変形したもの、もしくは変形した葉が集合したものだ。その上これらの器官はどの部分からでも発達できる可能性を秘めている。多種多様な植物たちは、この三つの器官で驚くべき環境適応能力や戦略を発揮している。

樹木の場合は、二次成長をするので毎年、年輪ができる。現在、草(草本植物)と木(木本植物)の区別はこの年輪ができるか、できないかで分類されている。なので、例えば、竹やバナナは二次成長(年輪ができない)をしないので草の仲間で、イワナシやマンリョウなどは小さくとも樹木なのだ。

この毎年造られる木質の部分は、セルロースとヘミセルロースとリグニンという分子から成り立っている。難しいことはまたあとで特集するつもりだが、木材はパイプ状の細胞壁が束になった集合体である。ミクロフィブリル(セルロースの束)は細長い箱が連なった骨組みのような状態で、その骨組みのまわりにヘミセルロースが詰め込まれ、接着剤の役割をするリグニンでこれを包んでいる。簡単に言うと筋肉のようなものだと言ったほうがいいのだろうか。これらの物質が共通していたとしても、それぞれの樹木が同じ形になったりしないのは、二つの要因から、彼らは自らの姿を作っていると言われている。

ひとつは遺伝情報による設計図をもとに、自分の体を作っていく要因と、もうひとつは環境に適応してそのつど柔軟に体を作っていく要因。これらのことが複合的に影響し、また作用と反作用・相互作用を繰り返しながら、植物という生命はそこに存在している。

樹木(植物)は一度発芽すると、その場所から動くことができない。当たり前の話なのだが、ここが一番重要なポイントと考えて間違いない。そのため、樹木は環境に対応していくための、さまざまなストレス感知システムを持っている。そこで今回は重力と風の摩擦抵抗について取り上げたい。

まず、重力感知システム。
発芽してから茎は重力の反対方向に伸びていく反応(負の重力屈性)を示し、根は重力の方向へと伸びる反応(正の重力屈性)を示す。このしくみがあるために植物はその体を安定させ、効率よく太陽の光を受けられる形を作ることができる。ためしに、鉢植えの植物を横に倒して一日二日置いてみよう。軸になっている部分は見る見る起きて地面に垂直になるはずである。また、その主軸になっている茎や幹が折れるようなことがあっても成長先端部に近い芽や枝が主軸の代わりになるように発達するし、幹が傾いたりすると、倒れている反対方向に枝を発達させてバランスをとろうとする木もある。枝の反対側に根があるというのは、形成層がらせん状に幹を上がっている理由もあるが、こういったストレス感知システムの作用による重心バランスと関連していることもその理由である。

そして、ウインドフリクション、風の摩擦抵抗。
樹木と風との古いかかわりも見逃すことができない。例えば、皆さんが直立不動の状態から両腕を横に伸ばした状態。この両腕が樹木の枝だとすると、風の抵抗を受けたとき当然上下左右にゆれる。このゆれに対して、ストレス感知システムが働き、枝を安定させるために、脇の下の部分や肩の部分を補強しようとする。そして脇腹(幹)、つづいて足(根)も突っ張ったり、横方向に伸ばしたりして(側根)ふんばらねばならない。これに対応するため、前述のセルロースとヘミセルロースとリグニンが合成され筋肉がどんどん補強されていく。細かいことを言うと、広葉樹と針葉樹では筋肉のつき方が違うので、その補強される側が正反対になる。広葉樹の場合、倒れている反対側(背面)が幹を引っ張るように太っていくが、針葉樹は倒れている側が突っ張りあげるように太っていく。枝の場合、広葉樹は枝の上面(そら側)に筋肉がつけられ、針葉樹は枝の下面(地面側)に筋肉がつけられていく。

ごちゃごちゃと書いてきたが、実際には、こんなにバラバラに作用するのではなく、樹木の360度放射状に展開する地上部の枝や幹と地下部の根系は、同時に作用し合い、自分が発芽した場所に適応しようとしている。

クラウス・マテック博士(Dr.Mattheck)は樹木を水に浮かぶ帆掛け舟に見立てて(帆の部分が枝葉で、マストが幹、船とアンカーが根元から根茎を表している)こう説明している。樹木はその上部、葉、枝、幹、根と、連続する木質は、それぞれが連なっている各部分のサイズと強度の構造が、風の負荷(摩擦抵抗)に見合うように作られていく。そして、個々の樹木には一般的にウィークポイント(構造上弱い部分)があり、そのストレス負荷によって内部作用(成長促進物質を合成)を促し、弱い部分の強度を補う適応性のある成長をする、と言っている。
(マテック博士は光など他のストレスについては、触れていないようなので、これからもう一度その著作に目を通してみたい。間違いが見つかり次第変更し、改定していきたいと思う。)

このように、「樹木はそのストレスがあるがために、自らを成長させ強靭なユニフォームをまとうことができる」という一つの捉え方ができるのだ。

そしてそれが、ユニフォームストレスの原理。