2003/11/2  #11

紅葉のしくみ 〜その3〜


それでは、どんな条件が紅葉に適しているのだろう。
と言っても、いまではテレビや雑誌などで取り上げられて
いるので、ご存知の方がほとんどだと思う。

「日中、太陽が照り温暖で、夜に急激に冷え込んでくると」

だいたいそんな感じだ。でも、それはどうしてなのか?
日中、太陽が照り気温が高いと光合成が促進されデンプン
がたくさん作られるため、アントシアンの原料である糖分
が豊富になる。しかし、そのまま夜間、気温が高いと糖分
が呼吸のエネルギーに消費されてしまうので、綺麗な紅葉
にはなりにくい。葉緑素(クロロフィル)の分解も夜の冷
え込みと、日中の紫外線照射があって促進されるので、こ
の二つの条件がなければ、葉緑体は「わしゃぁ、まだまだ
働けるわい!」といって、がんばり続けることになる。葉
緑素が分解されないと、アントシアンのもう一つの原料、
アミノ酸ができないので、紅葉がおこりにくくなる、とい
うことだ。黄葉の場合も同じく、葉緑素が分解されはじめ
て黄色色素が出現してくるので、同じ条件が必要。(この
場合、日中の気温が低くても可のはず。)

具体的に取り上げてみると、
・平均気温10度前後から徐々に冬支度を始め、(この平
均気温10度前後というのが、日本の温帯林にとって、な
にかのキーになっている気がする。さくらの開花のスイッ
チも気温10度前後だった。)夜間の気温が5〜6度まで
下がると急に紅葉が始まってくる。
・日中は日が照り温暖で、紫外線が葉に当たる条件が好ま
しいので、スモッグ等で大気が汚れている都市部より空気
のキレイな場所(山間部など)のほうが好条件となる。
・糖分を貯えやすい植物(カエデ科など)や、触媒酵素を
持っている植物が紅葉しやすい。
・地中からの水分の減少と、大気中には、ある程度の湿り
気が必要。たしかに言われてみれば、晩秋、夜露が草葉に
ついている寒い朝と紅葉はワンセットになって私の体は記
憶している。おそらく地中からの水分供給の減少は気温の
低下とあわせて離層の発達に関係していると考えられる。
それと、大気中の水分は呼吸を抑制したり、アントシアン
の合成に関係しているのかもしれない。この辺は調査不足
だ。

基本的に5〜6月から晩秋まで効率よく光合成を行い、た
っぷりとエネルギーを溜め込んだ樹木が、だんだん気温が
下がってきて(緩やかな気候の移行)、最後の締めくくり
のところで一気に寒くなって離層を閉塞・・・これが理想
的な紅葉のダンドリといえる。

どんな場所に行けば紅葉が見れるのか。
上記の条件が整うところ。関東以北の国立国定公園や、標
高が高く落葉広葉樹が多い自然林が残っているところ、と
なるだろう。我々の生活圏内では、ほとんどが植栽された
ものか、二次林的な構成になっているので、紅葉が美しい
という名所(お寺、公園、植物園、里山など)を訪ねると
ハズレはない。というより、あなどれないものがある。
ネットで「紅葉情報」、「紅葉特集」などと検索してみれば、
すぐに最新情報やその歴史的な情報が手に入る。

わざわざどこかに出かけるのもおっくうだ、とお思いの方
には、ぜひぜひ近場に自分だけのスポットを作ることをお
勧めする。日ごろあるく散歩コースに紅葉する樹木をチェ
ックしておくとか、休みの日によく行く公園でめぼしをつ
けておいたりする。その木の葉の色が変わり始めたときは、
なんともいえぬ静かで温かい感動があなたを包み込むだろ
う。



予測するのも楽しい。[以前、うえやまさんがコラムでア
ラスカのネナナ川のギャンブルを取り上げていたが、(凍
った川にポールを立て、いつ、ポールが倒れるか賭けるも
の)日本でも、この木がいつ紅葉し始めるか、もしくは最
後の葉っぱを落とすのか賭けるギャンブルがあってもい
い。]
紅葉は北国からだんだん南下してくることと、山間部であ
れば、山頂から麓へ向かって順番に降りてくることを考え
て、近くの野山をタイムリーに散策するのもいい。時期よ
りも少し早めに来てガッカリしてしまうこともあるかもし
れない。そんなときは、渓流や小川、水辺の付近を攻めて
みよう。気化熱で周囲の気温よりも低くなるので、一足早
い紅葉が期待できる。

もう一つ、樹勢が弱い(病気にかかっていたり、穿孔虫に
食べられていたり、土壌環境の悪い)樹木は、芽吹いてく
るのも遅いし、早く紅葉して落葉する。周りの同じ樹に比
べて早く紅葉している木を見つけたら、本調子ではないと
踏んで間違いない。中には青々とした木の一本の枝だけ先
に紅葉する場合がある。そんなときは枝の付け根に虫が入
っていたり、支柱で固定しているシュロ縄がきつくなって
いたり、枝の上に人が乗って通導組織をいためてしまった
りするとこんな症状(標徴)を示したりする。



写真は近くの公園のモミジバフウ。この両隣の木は同じ大
きさの苗木を同じ時期に植栽した。7年の歳月が経ち、ど
うしてこんな成長の差ができたのだろう?

・・・答えは写真の中にあります。
次回、その4(紅葉こぼれ話)でシリーズ完結。けっして
ラムネ庵さんのマネをしている訳ではありません。たまた
ま、こうなってしまいました、すみません。   つづく