2003/2/22  #16

恐怖の神 登場

常日頃から恐れているものがいくつかある。
族長からの呼び出し、妹からの電話、税務署からの召喚状、
イラガ、結婚と、いろいろあるが、
なかでもあの恐怖の神だけは、
名前を聞いただけで震え上がってしまう。
ドボク族のつわもの達でさえ、その神が現れると
もんどりうって逃げ惑うのだ。

この神は太古の昔から人々の心の中に巣くい、
あまたの惨劇を引き起こし、根拠のない楽天的な発言で、
人々を翻弄してきた。

忘れないで欲しい。
ついこの間、太平洋戦争でもこの恐怖の神は大暴れをし、
320万人もの兵士たちが死んでいったのだ。
そして戦争で死んでいった他国の人々まで含めると、
どのくらいまで膨れ上がるのだろうか。
そんな猛威を振るう、恐るべき希望的観測の神が存在するのだ。

その名も「いけまっしゃろ大明神!」。

いけまっしゃろ大明神。
(地方によっては、「いけまっしゃろ大権現様」にも変身する)
あぁ、何度聞いても震えがくる。
それはまさに、この世でもっとも恐ろしい神。
ドボク族の前には、例えばこんなふうに現れたりする。

「おおぉ!よう帰ってきたなぁ、どうやったぁ?エゲレスの
おなごは?」
「だめですよ、てんで相手にしてくんない。」
「ほうかぁ、てっきり青い目の嫁はん連れて帰って
くるんかなぁと思っててんけど。」
「ま、ワタクシの器量ではこんなもんですわ。
それより仕事のほうはどんな感じです?」
「おお!そーや、ちょうどいいところに帰ってきたがな。
明日からまた現場頼むわ。朝7時出発で。」
「えー!僕、まだいろいろ手続きしなくちゃ
いけないんですよぉ。帰ってきたばっかりなんで・・・」
「何の手続きやねん?かまへんがな。
そんなん電話で何とかしーや。」
「そのぉ、まだぜんぜん疲れがとれてないっていうか・・・
その現場って、水道工事とかガス工事終わってます?」
「知らん。」
「またぁ。いつもそれで手待ちになるんスから。僕が現場
はいっても結局手待ちになるんだったら、いっそ休みに、」
「工期、今週中やねん。」
「マジですか?」
「んん、とにかく人手がいるねん。ユンボとユニックももって
行くし・・・なんとか、いけまっしゃろ!」
「・・・。」

いけまっしゃろ大明神。
それは人々の前に突如現れ、あらゆる常識や予定を覆す。

最新の研究報告によると、
これはどうやら神などではなく、
修羅場をくぐってきた人、人生経験豊富な人、楽観的な人、多忙で余裕のない人などから発生する「いけまっしゃろ菌」が関係しているらしい。すべての人に空気感染する可能性があり、発病するまでの潜伏期間も定かではない。万が一感染してしまうと、いつ発病するとも知れない、恐怖のいけまっしゃろ大明神になってしまうのである。

読者の皆さんの身の回りに、突如いけまっしゃろ大明神が現れたとしても、それはその人が宿主ではなく、菌に犯されているだけの初期症状の可能性もあるので、冷静な判断で対処されたい。といって、いまのところコレといった対処法があるわけでもなく、いけまっしゃろ大明神に対して、あーだこーだと盾突いていると、「そのくらいやれんで仕事なんかできるかい!」
と逆ギレされ、今度は「逆ギレ大魔王」に変身する可能性があるのだ。こうなるともう菌に体が蝕まれ末期症状と判断して間違いない。まさに触らぬ菌(神)にタタリなしとは、このことかもしれない。

ワタクシもついこの間
「ま、いけまっしゃろ。」
と、思わず口から出てきたのには、ショックのあまり
2・3日寝込んでしまったところだ。
来週あたり、精密検査に行こうかと思っている。

太古の昔から存在していたことは確かなので、それに対する免疫機能か、いけまっしゃろ菌を抑制する作用を持つ生命体があるとワタクシはにらんでいるのだが・・・。

厚生労働省はインフルエンザや花粉症もさることながら、早急に、いけまっしゃろ菌に対する対策委員会を設置し、これに対処していただきたい。