2002/10/2  #8

実録!ドボク族緊急出動24時!


今年の夏は暑かった。
毎年そんなことを言っている気もするが、
こんなにバテるのはワタクシがオッサンだからなのか、
はたまた確実にこの星の気温が上がっているからなのか。
自分の体温よりも暑い日が続くと、
さすがに日ごろ鍛えたドボク族でさえ動きが緩慢になり、
局長の10時デスコールを聞く前に小休止してしまう。
フト、この仕事を何歳まで続けられるのだろうか、
と一抹の不安がよぎったりもするが、
ここのところだいぶ涼しくなってきたので
そんな思いも何処かへ行ってしまった。

そんな季節にやって来るのが台風。
夏の終わりに来てくれる台風はヒートアップした日本の
大気を撹拌しクールダウンしてくれるありがたい存在だ。
日本中の山々の剪定作業をしてくれるし
森の中にギャップを発生させる手伝いもしてくれる。
ただ少し勢いあまって土砂崩れが発生したり、木が倒れたり、増水して堤防が決壊したりと、やんちゃもしたりする。
(森の中のギャップや、なぜ土砂崩れなどが起きやすくなったかについてはウケウリ学で取り上げてみたい)
吹きすさぶ暴風雨の中、ドボク族は何をしているのか?
全世界40万人の熱心なドボク族ファンなら、
「どうせシフトダウンしているに違いない」
と思っているかもしれないが、それは大きな誤解である。

では我々はいったい何をしているのか。
・・・それは、サーフィンである。
いや、正確に言うと、ネットサーフィン。
ネットサーフィンをしながら待機している、
と言ったらいいか。
もっと突っ込んで正直に言うと、
エロネットサーフィンをしながら、
粛々と自宅待機している。これが正解だ。

前日から緊急出動用にシートやロープを準備し、
チェーンソーなどの道具は整備しておく。
個人の道具の手入れはもちろんだが、(実は滅多にしない)
携帯電話の充電はしっかりしておかなければならない。

そう・・・あれは数年前、
大きな台風が大阪を直撃したときのことだ・・・。
午後三時、事務所から
自宅待機している各スタッフに連絡が入る。
「えーと、いま、役所から連絡が入りました。速やかに倉庫に集合してください。」
そして、ドボク族メンバーが集結すると、
族長からそれぞれに指示が出される。

「みんな、ごくろーさん。
いつものことで、分ってはいると思うが風雨の中の作業なんで、ケガせんように。安全第一でな。」
「えーと、KとIは○号線ナンチャラ付近の街路樹が道路に倒れてるので、その処理と・・・HとKは○○地区集会所近くの枯れた松が倒れて隣の木に引っかかってるらしい、同じように伐採やけど、ワシと一緒に来てくれ。それから、HとMとMは○△_神社手前のケヤキの枝が電線を切って、それがまだ引っかかったマンマやから、電気屋さんと協力して首尾よく処理してくれるか。それぞれ、さばいた木は役所の剪定枝処分場へ運ぶこと。」
「あ、それと、各現場に着いたら状況報告と写真を忘れんようにな。」

我々は「ブラジャー!」と雄叫びを上げ、
それぞれ軽トラや2トンダンプ、ユニック車(クレーン付のトラック)などで現場に急行する。

【ここで少しだけワタクシが小耳に挟んだ情報をお伝えしたい。確認したわけではないので、あやふやな情報だが。ふだん市町村の入札工事(公共工事)をする業者は、その市町村が災害にあった場合、役所の所定の管轄部署と協力してそれ以上被害が拡大しないように努める義務のようなものを負っているらしい。それは業務委託なのか?と聞かれることがあるが、予算の都合(台風のように日本中を巻き込む場合、被害の甚大なところから予算が組まれると思う)がつけば後でそう処理することもあるかもしれないが、ワタクシの知っている限り、資材を使わない工事ではほとんどが業者のボランティアである。】

おのおの現場の処理が終わると、
連絡を取り合い、ほかの現場に合流する。
そんなことをしているうちに、
次から次へと災害現場が役所から連絡が入る。
役所の担当者も心得たもので、我々が全国の巨木を治療しているプロだと知っているので、ややこしい現場はみんなこっちに回ってくる。
その有様はまさに緊急出動24時だ!
すぐさま、小隊が編成され現場へ急行する。
木の撤去が終わると、近くの小川の堤防が決壊しているので
土木建設業者と共同で土嚢を積んで復旧する。
ウダウダ言わずに何でもやらなくてはいけない。

午後七時、ようやくひと段落を終えて、
倉庫へ戻ってくるドボク族のメンバーはぐでんぐでんに
なり顔は泥だらけだが、どこか誇りに満ちている。
解散したワタクシも今日はいい仕事をしたと感嘆し、
疲れを癒す銭湯から、サンダル履きで帰る途中のことだった。
「また新しい現場が入ったみたいや!すぐ倉庫来て!」
と、軽トラを運転しながら先輩が声をかけてきた。

ワタクシはその台風が初めての緊急出動だったわけであるが、
このような災害時における現場出動の連絡は台風通過直後、
あとからあとから増えてくるようだ。

けっきょくその日は午前零時を回り、
1時ぐらいまで作業をすることになった。
作業が無事終わり、数時間緊迫する状況で働いた
男たちの顔からは安堵の笑みがこぼれる。
まことに、お疲れさまとはこのことだ。

族長がねぎらいの言葉をかける。
「今日はみんなごくろーさん。ようがんばったな。
カゼひかんように風呂に入って休もう。
だいぶ遅なったから・・・
明日は8時に倉庫集合にしようかな・・・。」

・・・。
「・・・休みとちゃうんかい!」
と、思ったのはワタクシだけであろうか。

台風が訪れるとき、我々はいったい何をしているのか。
・・・それはサーフィンである。